ある昆虫が食物としている植物を食草という。たとえば,モンシロチョウの幼虫の食草はキャベツその他のアブラナ科植物,ナミアゲハの幼虫の食草はカラタチ,ミカンなどである。後者のように食草が木本植物であるときは,食樹ということもある。また,その昆虫がその食草に寄生しているという見方をして寄主ということもある。害虫についてはこのいい方がよく用いられる。昆虫はその食草と進化的に密接にむすびついており,食草のもつ化学的成分にひかれてそれを発見し,摂食する。チョウやガでは,成虫は幼虫の食草をにおいによって認知し,その食草に産卵する。このことは食草のにおいをつけたただのろ紙にチョウが産卵してしまうことからもわかる。有毒植物を食草とする昆虫も少なくないが,そのような昆虫は,その植物が昆虫に食われないために作り出す有毒物質に対して耐えるばかりでなく,むしろその物質に積極的にひかれて産卵,摂食する。その有毒物質を自分の体内に蓄えて,小鳥などの敵から身を守ることすらある。これらの現象はいわゆる共進化の好例とされている。
執筆者:日高 敏隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報