担子菌類の菌蕈(きんじん)綱,単室担子菌亜綱の餅病菌Exobasidiumの寄生によって起こる植物の葉の病害。菌が葉に侵入すると,葉を厚い肉質に変質肥大させたり,葉の一部だけが膨らんでちょうど大きな淡緑色のこぶがぶら下がったような形になる。後にはここが粉をふいたようになる。白い肉質肥厚のさまが餅に似ているというのでこの病名が与えられた。白い粉に見えるのは標兆(病患部に現れる病原体自身)で,切片を顕微鏡検査すると担子器が柵状に並び,この上に多くの担胞子が形成されているのが観察される。担胞子は飛散して別の葉に到達し新しい感染を起こす。チャ,ツツジ,サツキ,サザンカ,ツバキなどに発生がみられる。庭木のツツジでは春5~6月ごろに多く,チャでは秋に多く発生する。新葉が伸びるころ,葉の裏側まで十分にジチアノン剤をまいてやると,餅病の発生を止めることができる。この菌は長い間人工培養不能とされていたが,1954年江塚昭典が培養に成功した。チャでは餅病ときわめて似た病気の網餅(あみもち)病もある。これは病斑部に網目の紋ができているので普通の餅病と区別できる。
執筆者:寺中 理明
担子器は寄主組織内の菌糸から直接形成され,寄主の表面に現れる。担子胞子が無数に形成された寄主菌癭(きんえい)が,膨らんで白粉状となるところから和名がついた。ツバキモチビョウキンE.camelliae Shiraiは大型で不規則に肥大した大脳状の菌癭をつくり,類似した菌癭はツツジモチビョウキンE.vaccinii var.japonicum (Shirai) McNabb,コケモモモチビョウキンE.vaccinii var.vaccinii Woron,チャハブクレモチビョウキンE.vexans Mass.などが普通に見られる。
執筆者:椿 啓介
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