香港基本法(読み)ほんこんきほんほう

共同通信ニュース用語解説 「香港基本法」の解説

香港基本法

中国の「特別行政区」である香港憲法に当たり、1990年に全国人民代表大会(全人代=国会)で採択された。97年の中国への返還後も資本主義を継続し、私有財産権、言論集会信仰の自由などを認める「高度自治」を50年間維持することを保障一方で基本法18条は「全人代常務委員会は香港政府がコントロール不可能な動乱が香港で発生した場合、中央政府が中国の法律を香港で実施する」と規定。戒厳令発令や人民解放軍投入を可能にする根拠となっている。(香港共同)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「香港基本法」の意味・わかりやすい解説

香港基本法
ほんこんきほんほう

正式名称は「中華人民共和国香港特別行政区基本法」。1997年に英国から中国に返還された後の香港の憲法に相当する。1984年の中英交渉で香港返還が決まった後、中国政府が香港基本法の起草作業に入り、1990年4月に国会に相当する全国人民代表大会(全人代)で採択された。

 「一国二制度」による特別行政区として国防・外交以外の「高度な自治」を保障し、資本主義制度を50年間変更しないと明記。行政管理権、立法権、司法権をもち、財政の独立、通貨・パスポートの発行、国家以外のメンバーが参加できる国際組織・国際会議に「中国香港」名義での参加を認めている。コモン・ロー(英米の慣習法)など返還前の法律を保持し、中国本土と異なり死刑は廃止している。香港が管理する事務に中央政府・地方政府が干渉することも禁じ、「準国家」的な地位を保障している。特別行政区の首長である香港行政長官と香港立法会(議会)については返還から10年後の2007年までの選出方法を定め、最終的には香港行政長官と全議員を普通選挙で選出することを明記している。

 一方で、香港基本法の解釈権は全人代常務委員会に属すると規定される。2019年の逃亡犯条例改正案反対デモをきっかけに香港で中国政府への抗議行動が大規模化すると、全人代常務委員会は2020年6月30日、「香港国家安全維持法」を可決・施行し、香港基本法の付属文書に盛り込んだ。中国の治安当局が香港に出先機関「国家安全維持公署」を新設し、外国勢力の絡む事件などで管轄権を直接行使するとしており、国家分裂や政権転覆、テロ活動、外国勢力と結託して国家の安全に危害を加える行為に最高無期懲役の刑事罰を科す。国家の安全維持を名目に中国政府が香港を直接統制することを認めるもので、欧米諸国や香港の民主派から「香港基本法が定める高度な自治を骨抜きにした」との批判が強い。

[矢板明夫 2021年7月16日]

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