馬子唄(読み)マゴウタ

デジタル大辞泉 「馬子唄」の意味・読み・例文・類語

まご‐うた【馬子唄】

民謡分類の一。馬子博労ばくろうが馬をひきながらうたう歌。馬方うまかた唄。馬方節

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精選版 日本国語大辞典 「馬子唄」の意味・読み・例文・類語

まご‐うた【馬子唄】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 民謡の一つ。馬を売買する博労(ばくろう)、または旅人や荷物を馬にのせて運ぶ馬子の、馬をひきながらうたう唄。箱根鈴鹿碓氷などの峠越えの馬子唄が名高い。
    1. [初出の実例]「馬子うたに二人ひれふす麦の中」(出典:雑俳・柳多留‐九(1774))
  3. 歌舞伎下座音楽の一つ。を取り入れて、街道宿場の場面に用いたもの。「箱根八里」など数種あるが、三味線入りと素唄で聞かせるものとがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「馬子唄」の意味・わかりやすい解説

馬子唄
まごうた

日本民謡の分類上、仕事唄のなかの1種目。馬子が馬を曳(ひ)いて歩きながら移動するおりの唄の総称。その源流は「甚句(じんく)」で、江戸時代中期以降に、岩手県を中心とする旧南部領の博労(ばくろう)たちが、馬市の往来など夜間馬を曳いて移動する際歌い出した「夜曳き唄」が今日の『南部馬方節』である。この唄が生まれるについては、南部藩の御用博労が幕府へ御用馬を納めるときの、その御用馬道中の祝い唄『南部駒(こま)曳き唄』の模倣があったと思われる。民間の博労の馬の移動は、通行人のじゃまにならない夜間に行われた。これは臆病(おくびょう)な馬の移動にも都合がよかった。しかし夜間の移動は博労にとっては心細いし馬は眠くなる。そこで寂しさをまぎらせるかたわら、歌うことで周囲の人たちに自分の位置を知らせ、さらに道路沿いの草むらからウサギやキツネが飛び出して馬を驚かせないため、そしてもう一つ馬の眠け覚ましに大声で「夜曳き唄」を歌った。それが東北一円の博労の間に広まっていった。ところが関東以西の主要街道の駄賃付け馬子は、農民の副業的なものであったことから、博労の習俗をまねて歌うようになった。その唄は博労の「夜曳き唄」に比べると早間で歯切れがよい。これは、博労は十数頭の馬を移動させるので、ゆっくり歩くのに対して、駄賃付け馬子は目的地へ早くつくのが仕事だけに、歩きも早く、したがって唄も早くなったのである。なお、南部の「夜曳き唄」の及ばない中部以西の農山村の「馬子唄」は、地元の農作業唄や流行(はやり)唄を転用している。

 なお「馬子唄」と「馬方節」の違いは、曲名の命名方法が異なるだけである。前者は「馬子曳き唄」の略で、用途上の命名であり、後者は唄の利用者の職業名を用いたもので、年代的には「馬子唄」のほうが古い。しかし今日用いられている曲名としては差はなく、それぞれの土地でどちらを用いる傾向が強いかだけのことである。なお「祭礼馬子唄」は祝い唄で、一般にいう馬子唄のなかには加えない。

[竹内 勉]

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