日本大百科全書(ニッポニカ) 「高カリウム血症」の意味・わかりやすい解説
高カリウム血症
こうかりうむけっしょう
血中のカリウム濃度が上昇して1リットル当り5.5ミリ当量(5.5mEq/l)以上となり、細胞の働きが低下した状態。電解質代謝異常の代表的疾患とされる。原因の一つに腎臓(じんぞう)からのカリウム排泄(はいせつ)の低下があり、アルドステロンの欠乏や腎不全、尿細管の障害、カリウム蓄積を呈する利尿剤の使用などが原因で生ずる。これとは別に、細胞内からカリウムが遊離して血中など細胞外へ移行する場合があり、原因は血液が酸性に傾くアシドーシスや血管内溶血、筋肉壊死(えし)、周期性四肢麻痺(まひ)、サクシニルコリンなどの薬剤投与などである。また、やけどなどによる細胞破壊やカリウム含有薬剤の過剰摂取などによっても生ずる。駆血(くけつ)帯の締めすぎなど採血時の条件が原因となる場合もある。なお、血小板増多症や白血球増多症が原因でカリウム濃度の上昇がみられる偽性高カリウム血症もあるが、これは除外される。
症状としては、悪心(おしん)・嘔吐(おうと)、筋力低下、しびれや麻痺、心機能異常や不整脈などを伴う。血中カリウム濃度がさらに上昇し重症化すると致死性不整脈から心停止に陥る危険性がある。治療は、原因となる疾患があればこれを除去し、血中カリウムを低下させて細胞内へ移行させることを目的にグルコースやインスリンの点滴静注などを行う。重い腎機能不全などには透析治療が用いられる。
[編集部 2016年7月19日]