標高1000m前後の高原地帯で,夏の冷涼な気候条件を利用して栽培される野菜類をいう。高冷地野菜ともいう。40種類をこす野菜が栽培されているが,代表的なものはハクサイ,キャベツ,レタスである。明治半ばころから外国人避暑客の別荘が長野県軽井沢に作られるようになり,この避暑客用として地元の商人がキャベツの栽培を農家にすすめたのが始まりといわれる。1897年(明治30)ころから本格的な栽培が始まり,軽井沢を中心に付近の村でも作られるようになった。明治から大正の中期まではおもに地元の軽井沢向けに栽培され出荷されたが,大正末期からは東京や名古屋,大阪などの都市にも出荷されるようになった。最近では長野県以外にも群馬県,岩手県,岡山県などに高冷地型の産地が増えており,標高400~500m地帯での栽培も高冷地栽培といういい方をしている。高原野菜の特徴は,標高差による夏季の冷涼気候を利用して,平地で栽培のしにくい夏に独占的に野菜類を容易に栽培するところにある。したがって,収益性もよいものが多く,面積も年々増加する傾向がある。ただし栽培期間が短いので,年1作の場合が多く,生育期間の比較的短い葉菜類の栽培が多い。京阪神など消費地への出荷は,農協などの組織を通じ,トラック輸送によって計画的・統一的に行われている。高冷地では1日の昼夜の温度較差が大きいため,トウモロコシで代表されるように野菜の品質や味がよい。この品質を維持するため,包装の改善や低温輸送の方法が進んでいる。
→高冷地農業
執筆者:平岡 達也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報