改訂新版 世界大百科事典 「高周波誘導炉」の意味・わかりやすい解説
高周波誘導炉 (こうしゅうはゆうどうろ)
high-frequency induction furnace
高周波誘導加熱を利用した電気炉の一形式。使用目的によって加熱炉と溶解炉に分けられる。加熱炉は短時間に加熱し熱間加工を容易にする場合や,熱処理用として用いられる。コイル内に被加熱材料(金属)を入れ,コイルに高周波電流(500~1000Hz)を流すと,金属内に渦電流が生じ,ジュール熱が発生する。この熱により金属の加熱・溶解を行うものである。誘導加熱によって金属に発生するエネルギーは,金属の半径に比例し,高さに反比例し,周波数の2乗に比例することが知られている。したがって金属の形状は薄い板状,周波数が高いほうが速く溶解できる。溶解物は電磁力で自動的にかくはんされる。
高周波誘導炉は金属が発熱体となるために迅速に高温まで加熱される。また熱効率もよく,温度制御その他の作業も容易で,加熱を局部に限定することもできる。しかし付帯設備として高周波発生装置が必要で費用が高くつき,実験室用または高合金鋼の溶解炉に用いられていた。近年は半導体技術の進歩により制御部分が比較的安価にできるようになったため,低周波誘導炉の分野とも競合しており,鋳鋼・鋳鉄溶解炉でも2~3t程度の大容量溶解炉が実用化されてきた。また,高合金鋼や超合金の真空溶解,半導体材料のゾーンメルティングなどの加熱源として広く用いられている。
執筆者:梅田 高照
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報