翻訳|skin effect
物質内を伝搬する電磁波または交流電磁場は,そこに誘起される電流によってジュール熱を発生し,そのエネルギーの一部を失う。進行方向をzとしたとき,たとえば電場の強さはzに対して指数関数e⁻γzの形で減衰し,減衰定数γは,と計算される。ここでω,cはそれぞれ電磁波の角周波数および速度,εとσは物質の誘電率と導電率である。物質が誘電体などの場合にはσ≪εωが成立し,γがほとんど0になるので電磁波は減衰しないで伝搬できる。一方,金属の場合にはσ≫εωで,となるので,電磁場の振幅は,だけ進むごとに1/eに減衰していく。すなわち電磁波は金属内に深く入りこむことができずにその表面近くに局在することになる。これを表皮効果といい,δを表皮効果の厚さまたは表皮厚さという。電磁波が表面近くに局在するということは,導体の有効な大きさが減少することであり,そのぶんだけ電気抵抗が増える。電気材料としてよく用いられる銅では,周波数νの電磁波に対しては,δは,から計算でき,たとえばν=3×1010Hz(波長1cm)のマイクロ波の場合δ=0.4μmとなり,ほとんど内部に進入できない。ν=50Hzの交流ではδ≒1cmであるから通常はほとんど問題にならないが,大電力を長距離送電する場合などには考慮されなければならない。
執筆者:清水 忠雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
高周波電流または電界(電場)が導体で表面付近のみを流れ、内部には流れない現象。電流・電界が浸透する厚さの目安を表皮厚といい、次の式で表される。
金属板は電磁波に対して鏡として働く。電磁波は金属板に当たるとき、その大部分は反射されるが、一部は金属板内部へ浸透する。この電磁波は表面から離れるにしたがって急速に減衰する。表皮厚とは、表面のところの電界に対して、表面からの深さ約0.37倍となるところをいう。銅板に100メガヘルツ(TV波)が当たるときの表皮厚は約7マイクロメートルほどである。針金上を高周波電流が流れるとき、針金上の電流の分布は表面付近に集まるようになり、実効的に針金の中央部を流れない。これを避けるために、高周波電流の流れる針金は互いに絶縁した細い針金を束にしたものを使うことがある。これをリッツ線という。
マイクロ波はアンテナから放射させるとしだいに広がり弱くなる。そこで送信アンテナと受信アンテナの間に針金を張れば、送信側アンテナの針金上につくられた表皮電流は針金を伝わって受信アンテナに達する。この場合、針金の外側にも高周波電磁界があるが、これも針金面に沿って進む。このようにして非常に効率よく通信することができる。これをG線という。
[山口重雄]
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