表皮効果(読み)ひょうひこうか(英語表記)skin effect

翻訳|skin effect

精選版 日本国語大辞典 「表皮効果」の意味・読み・例文・類語

ひょうひ‐こうか ヘウヒカウクヮ【表皮効果】

〘名〙 高周波電流電磁場導体表面近くに集まって内部に流れない現象周波数が高くなるほど顕著になり、電気抵抗が大きくなる。

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デジタル大辞泉 「表皮効果」の意味・読み・例文・類語

ひょうひ‐こうか〔ヘウヒカウクワ〕【表皮効果】

高周波電流が導体を流れるとき、電流が導体の表面付近に集中する現象。実効的な抵抗は著しく増す。

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改訂新版 世界大百科事典 「表皮効果」の意味・わかりやすい解説

表皮効果 (ひょうひこうか)
skin effect

物質内を伝搬する電磁波または交流磁場は,そこに誘起される電流によってジュール熱を発生し,そのエネルギーの一部を失う。進行方向をzとしたとき,たとえば電場の強さはzに対して指数関数eγzの形で減衰し,減衰定数γは,と計算される。ここでω,cはそれぞれ電磁波の角周波数および速度,εとσは物質の誘電率導電率である。物質が誘電体などの場合にはσ≪εωが成立し,γがほとんど0になるので電磁波は減衰しないで伝搬できる。一方金属の場合にはσ≫εωで,となるので,電磁場の振幅は,だけ進むごとに1/eに減衰していく。すなわち電磁波は金属内に深く入りこむことができずにその表面近くに局在することになる。これを表皮効果といい,δを表皮効果の厚さまたは表皮厚さという。電磁波が表面近くに局在するということは,導体の有効な大きさが減少することであり,そのぶんだけ電気抵抗が増える。電気材料としてよく用いられる銅では,周波数νの電磁波に対しては,δは,から計算でき,たとえばν=3×1010Hz(波長1cm)のマイクロ波の場合δ=0.4μmとなり,ほとんど内部に進入できない。ν=50Hzの交流ではδ≒1cmであるから通常はほとんど問題にならないが,大電力を長距離送電する場合などには考慮されなければならない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「表皮効果」の意味・わかりやすい解説

表皮効果
ひょうひこうか
skin effect

高周波電流または電界(電場)が導体で表面付近のみを流れ、内部には流れない現象。電流・電界が浸透する厚さの目安を表皮厚といい、次の式で表される。


 金属板は電磁波に対して鏡として働く。電磁波は金属板に当たるとき、その大部分は反射されるが、一部は金属板内部へ浸透する。この電磁波は表面から離れるにしたがって急速に減衰する。表皮厚とは、表面のところの電界に対して、表面からの深さ約0.37倍となるところをいう。銅板に100メガヘルツ(TV波)が当たるときの表皮厚は約7マイクロメートルほどである。針金上を高周波電流が流れるとき、針金上の電流の分布は表面付近に集まるようになり、実効的に針金の中央部を流れない。これを避けるために、高周波電流の流れる針金は互いに絶縁した細い針金を束にしたものを使うことがある。これをリッツ線という。

 マイクロ波はアンテナから放射させるとしだいに広がり弱くなる。そこで送信アンテナと受信アンテナの間に針金を張れば、送信側アンテナの針金上につくられた表皮電流は針金を伝わって受信アンテナに達する。この場合、針金の外側にも高周波電磁界があるが、これも針金面に沿って進む。このようにして非常に効率よく通信することができる。これをG線という。

[山口重雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「表皮効果」の意味・わかりやすい解説

表皮効果
ひょうひこうか
skin effect

高周波数の電流や電磁場が導体の表面に局限されて内部に入らない現象。直径 4cmの鉄線に交流が流れる場合に,表面と中心軸における電流密度の比は,たとえば周波数が 500Hzのとき密度の比は 2.5,1000Hzのときは 5.9,2000Hzのときは 21,…となる。交流による磁場は時間的に変化するので誘導電場を生じ,これが導体内部の電流を打ち消す。この効果は周波数が大きいほど,また断面積が大きいほど著しい。この効果のため交流に対する導線の実効抵抗は直流のときよりも大きくなる。これを避けるには細線をより合わせたリッツ線などを使う。金属を高周波で焼き入れするとき,この効果が作用して表面だけを硬化させることができる。

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百科事典マイペディア 「表皮効果」の意味・わかりやすい解説

表皮効果【ひょうひこうか】

高周波電流が導体を流れるとき,電流が導体の表面近くに集中して流れる現象。このため導線の内部は電流が流れないので,断面積が減ったのと同じことになり,導線の実効抵抗が増す。これを防ぐため導線をリボン状や中空にしたり,細い線を絶縁してより合わせたリッツ線を使う。高周波焼入れ等の利用法もある。
→関連項目誘導加熱

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法則の辞典 「表皮効果」の解説

表皮効果【surface effect】

導体に交流を通じた場合,周波数 ω が高くなると,流れる電流は表面付近に局在するようになり,内部の電流密度が低下する.この大きさは積 ωμκ によって定まるが,通常の場合には μ(透磁率)とκ(導電率)はほぼ一定なので,周波数に大きく依存することになる.通信用ケーブルなどで多数の細い縒り線を束ねて用いるのは,この表皮効果による悪影響を避けるためである.なお,導体を貫通する交流磁場においても同じような効果が認められる.

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