改訂新版 世界大百科事典 「真空溶解」の意味・わかりやすい解説
真空溶解 (しんくうようかい)
vacuum melting
真空容器内で金属材料を溶解する方法。真空で溶解することにより,脱酸素,脱水素,脱窒素などの脱ガス,蒸気圧の高い不純物元素の除去,非金属介在物の低減などが可能となり,高温での品質が重要である耐熱材料,耐用寿命や信頼性が要求される高品質材料の溶解や鋳造に使用される。真空溶解法には誘導炉法,アーク炉法,電子ビーム炉法などがある。真空誘導溶解法では,10⁻1~10⁻3mmHgまたは不活性ガス雰囲気の真空容器内に設置された誘導炉で金属を溶解し,鋳造する。誘導炉は耐火物によって内張りされるために,金属と耐火物とが反応するなどの問題はあるが,溶解しようとする金属材料をあらかじめ電極に成形する必要はない。真空アーク溶解法では,10⁻2~10⁻3mmHgまたは不活性ガス雰囲気において,電極(消耗電極)と水冷銅鋳型内の溶融金属との間のアークによって電極を溶解し,水冷銅鋳型で鋳塊を製造する。あらかじめ消耗電極を成形する必要はあるが,耐火物の使用が回避できることから,耐火物と金属との反応がなく精錬効果が高い。また,高融点の活性金属(チタン,ジルコニウム,タンタル,ニオブ,モリブデンなど)の溶解にも使用できる。電子ビーム溶解法では,10⁻4~10⁻5mmHgの高真空において電子銃から発射された電子ビームで金属を溶解し,水冷銅鋳型で鋳塊を製造するが,アーク炉よりエネルギー集中度が高い。真空融解法は金属中に溶解しているガス元素(水素,酸素,窒素など)を分析する方法の一つであり,真空中で試料を黒鉛るつぼなどを用いて融解し,発生抽出される一酸化炭素,水素,窒素の測定を行うものである。
執筆者:佐藤 彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報