鉄鋼表面硬化法(読み)てっこうひょうめんこうかほう(英語表記)case hardening of steel

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鉄鋼表面硬化法」の意味・わかりやすい解説

鉄鋼表面硬化法
てっこうひょうめんこうかほう
case hardening of steel

表面被覆法と表面変成法に分けられ,後者には拡散変成と熱処理変成がある。
(1) 表面被覆法 最も知られているのは硬質クロムメッキ (→電気メッキ ) であるが,他の電気メッキも若干の硬化作用がある。硬質材料を溶接棒として鉄鋼面に肉盛りするハードフェイシングという方法も発展した。 Mn-Cr 系低合金鋼が車輪シャフトなどに,高炭素 Mn-Cr-Mo 系合金鋼が土木機械,ロールなどに,ハドフィールド鋼 (→マンガン鋼 ) が砕鉱機顎板,無限軌道などに用いられる。また鉄・ニッケルなどに超硬合金粒を分散させた複合金属材料,超硬合金粉を詰めた鋼管ステライト (→コバルト合金 ) ,クロム 30%の鉄合金,コモノロイ (Ni-Cr-Fe-Si-B 合金) などを溶接棒として,土木機械・各種エンジン部品,スクリュー (素地銅合金) などの被覆硬化に使う。ステライトは耐食性も強い。溶接は多く MIG ,潜弧法などのアーク溶接によるが,ガス溶接も用いられる。溶接によらず溶射による肉盛りも行なわれる。拡散メッキのクロマイジングカロライジングも表面硬化作用があり耐食性を増す。
(2) 表面変成法  (a) 拡散変成は浸炭法窒化法浸炭窒化法が代表的であるが,フェロボロン (→合金鉄 ) または炭化ホウ素に媒浸剤を加え水素中で加熱する浸ホウ法も注目されている。 (b) 熱処理変成は高周波焼入れ火炎焼入れが代表的である。前者は目的物に似た形のコイルをもつ高周波誘導炉で表面だけを瞬時に加熱し,後者はプロパン,アセチレンなどのガスを特に工夫したバーナで激しく燃やし短時間に表面だけ急熱して,いずれもただちに水または油中に急冷する。表面だけ焼きの入った硬化層 (深さは通常 1~10mm ) ができる。適用はほとんどあらゆる鋼種にわたるが,高周波法のほうが範囲は広い。シャフト,ロール,工具,自動車・車両機械関係に広く用いられる。ショットピーニングによる表面加工硬化も組織変成の意味でこの系統である。プラズマ,イオン,電子ビーム,レーザーを用い,CVD (化学蒸着) や PVD (物理蒸着) によって表面を炭化物,窒化物,酸化物,ホウ化物などで被覆する方法も発展している。

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