日本大百科全書(ニッポニカ) 「高山鳥」の意味・わかりやすい解説
高山鳥
こうざんちょう
alpine bird
高山にすむ鳥を漠然とさす。一般には海抜高度だけで高山を考えることが多く、高山鳥の内容にはかなりの混乱があるが、正確には次のようである。鳥にとって高山とは海抜高度でなく植生の状態によるもので、普通は高木限界以上の高度、ときには森林限界以上の高度をさす。このなかには低木林帯、草原帯、岩石帯、氷雪帯といった区域が含まれ、山地の地質と地形によってはこれらの区域がかなり低い高度までみられることもある。高山は風の強さ、雲霧や降水の様相が特殊なので、鳥にとっての条件は気候的に似た極地方とかならずしも同一ではない。
高山鳥には二つの種類がある。その一つは高山にだけすむ鳥であり、もう一つは高山にもすむ鳥である。狭義には前者のみが高山鳥であるが、普通は後者も含めている。また、温帯、寒帯の高山は季節変化が著しいので、高山に周年定住する鳥はほとんどなく、秋冬にはそこを去る。日本では狭義の高山鳥としてはイワヒバリ、カヤクグリ、ギンザンマシコ、ライチョウの4種しかなく、冬季も高山にとどまるのはライチョウのみである。広義の高山鳥としては、ホシガラス、ウソ、メボソムシクイ、ルリビタキ、ビンズイ、ノゴマ、ミソサザイ、ウグイスなどが主としてハイマツ帯などの低木林帯にみられ、飛翔(ひしょう)力の強いアマツバメやイヌワシも高山の上空に姿をみせることがある。
[浦本昌紀]