魂極る(読み)タマキワル

デジタル大辞泉 「魂極る」の意味・読み・例文・類語

たま‐きわる〔‐きはる〕【極る】

[枕]「命」「世」「うち(現)」「わ」などにかかる。語義・かかり方未詳。
「―命惜しけどせむすべもなし」〈・八〇四〉
「―宇智うち大野に」〈・四〉
[補説]語義は「魂きはまる」で生まれてから死ぬまでの意とするが、諸説がある。
書名別項。→たまきはる

たまきはる

たまきわる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「魂極る」の意味・読み・例文・類語

たま‐きわる‥きはる【魂極・玉極・霊極】

  1. [ 1 ] 語義およびかかり方未詳。
    1. 「内」にかかる。
      1. [初出の実例]「多麻岐波流(タマキハル) 内の朝臣(あそ)(な)こそは 世の長人(ながひと) そらみつ 大和の国に 雁卵(こ)(む)と聞くや」(出典古事記(712)下・歌謡)
    2. 「命(いのち)」にかかる。
      1. [初出の実例]「かくのみし恋ひし渡れば霊剋(たまきはる)命も吾は惜しけくもなし」(出典:万葉集(8C後)九・一七六九)
    3. 「磯(いそ)」「幾世(いくよ)」にかかる。
      1. [初出の実例]「冬夏と 分くこともなく 白たへに 雪は降り置きて いにしへゆ ありきにければ こごしかも 岩の神さび 多末伎波流(タマキハル) 幾代経にけむ」(出典:万葉集(8C後)一七・四〇〇三)
    4. 「世(よ)」「憂(う)き世」にかかる。
      1. [初出の実例]「玉切(たまきはる)世までと定め頼みたる君によりては言(こと)のしげけく」(出典:万葉集(8C後)一一・二三九八)
    5. 「我が」「立ち帰る」「心」などにかかる。
      1. [初出の実例]「霊寸春(たまきはる)吾が山の上に立つ霞立つとも坐(う)とも君がまにまに」(出典:万葉集(8C後)一〇・一九一二)
      2. 「恋しとも言はでぞ思ふたまきはる立ち帰るべき昔ならねば〈源俊頼〉」(出典:新勅撰和歌集(1235)雑二・一一三〇)
  2. [ 2 ] 〘 連語 〙 ( [ 一 ]を、「魂(たま)極る(命)」と解したところから生じたもの ) 魂がきわまる。命が終わる。
    1. [初出の実例]「本の身ながら玉きはる、魂は善所におもむけども、魄は修羅道に残って」(出典:車屋本謡曲・朝長(1432頃))
  3. [ 3 ] ( たまきはる ) 「建春門院中納言日記(けんしゅんもんいんちゅうなごんにっき)」の別称。冒頭の和歌の句による名。

魂極るの補助注記

( [ 一 ]について ) ( 1 )のかかり方については諸説あるが定説はない。(イ) 手纏(たまき)を佩(は)く内の朝臣(武内宿禰)の意で、「内の朝臣」の「内」と同音でかかる(記紀の例は枕詞としない)。(ロ) 手纏を佩く腕の意で、「腕」と類音でかかる。(ハ) 玉を刻む意で、「打ち」と同音でかかる。(ニ) 玉作りの本拠地である「宇智」へかかる、など。
( 2 )用法は、「命」の「い」にかかるという意識の転じたものといわれ、あるいは「礒宮」にかかる用法には古い伝誦があったのかとも想像されている。
( 3 )の「万葉」例の「吾が山」は、「春山」の誤りとする説も多い。一説に、玉の輪をきざむ意で「わ」にかかるという。後世の例は、これを学んだものか。

魂極るの補助注記

( [ 二 ]について ) この意識は、「万葉」例の原文「霊剋」「玉切」などにすでにうかがわれる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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