日本で最初に版本となった鯨専門書。紀州和歌山の薬店主梶取屋治右衛門の著作。1巻1冊。1760年(宝暦10)刊。治右衛門は,姓は山瀬,名は春政,号は如水軒という。稲生若水に本草を学ぶ。治右衛門は紀州という地の利を得て,実見した資料を基に《鯨志》をつくった。本書は,はじめにクジラについて通論し,次いで14種のクジラを図説している。その図説はかなり動物学的に優れている。図は画工が,クジラを実見し,写生したものがもとになっている。来日したP.F.vonシーボルトは日本のクジラに関心をもち,門人の高野長英,石井宗謙,岡研介たちにクジラに関する論文を書かせた。シーボルトは,論文から得た知識を自著《日本Nippon》(1832-52),《日本動物誌Fauna Japonica》(1833-50)で利用している。岡研介は《鯨志》の大部分を蘭訳し,《紀州産鯨について》という論文として,シーボルトに呈出した。
執筆者:矢部 一郎
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…のち友人坪井信道のすすめで江戸に出る途次,大坂で同郷の先輩斎藤方策と会い,そのまま大坂に開業,郷里岩国侯に召されて大坂を去ったが,そのころから精神病を発して没した。著書に日本最初の生理学総論書《生機論》(1831成稿)や,シーボルトに提出した論文《紀州産鯨についての記述》(梶取屋治右衛門《鯨志》の蘭訳)がある。【宗田 一】。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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