鴉鷺合戦物語(読み)アロカッセンモノガタリ

デジタル大辞泉 「鴉鷺合戦物語」の意味・読み・例文・類語

あろかっせんものがたり【鴉鷺合戦物語】

御伽草子。2巻または3巻。著者未詳。一条兼良いちじょうかねらの著ともいわれ、成立応仁の乱以後とされる。祇園ぎおん林のからすと、ただすの森さぎとの合戦擬人化して描いたもの。鴉鷺物語。鴉鷺記。

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精選版 日本国語大辞典 「鴉鷺合戦物語」の意味・読み・例文・類語

あろかっせんものがたり【鴉鷺合戦物語】

  1. 室町時代御伽草子。異類軍記物。二巻または三巻。一説に、一条兼良作といわれる。祇園林の烏と、糺(ただす)の森の鷺の合戦を擬人化して描く。鴉鷺物語。鴉鷺記。

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改訂新版 世界大百科事典 「鴉鷺合戦物語」の意味・わかりやすい解説

鴉鷺合戦物語 (あろかっせんものがたり)

御伽(おとぎ)草子。異類物。中鴨の森に住む鷺の山城守正素の美しい姫君に,祇園林に住む烏の東市佑真玄が懸想したが,その文を携えた使者が山城守に見とがめられ打擲(ちようちやく)されたことを発端に,あらゆる鳥類を巻きこむ希代の合戦が出来(しゆつたい)する。烏の陣営は鴻(おおとり)・鶏・雉・山鳥・鵄(とび)・鵜(う)・梟(ふくろう)をはじめとする総勢1万3000余騎,鷺の陣営は鶴・鵲(かささぎ)・雁金(かりがね)・鴨・鴛(おしどり)・鷗などの2500余騎。鷺の勢は無勢であったが,氏神住吉明神の冥加により大勝する。真玄は遠国の勢を催して恥をすすごうと再び合戦を企てるが敗走し,高野山の仏法僧を善知識として出家し,烏阿弥陀仏となり念仏に専心する。正素も2度の合戦の有様を見て世をいとい,同じく高野山に上って鷺阿弥陀仏となり,両者は無二の伴侶となってついに大往生を遂げる。全11段,異類物の中での最長編。《精進魚類物語》より後の成立か。一条兼良の作と伝える。旧例や故事を多く引き,歌学書・往来物的な性格が強く,《三流抄》系統の古今注がその背景に存すると考えられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鴉鷺合戦物語」の意味・わかりやすい解説

鴉鷺合戦物語
あろかっせんものがたり

室町期の物語で動物どうしの擬軍記。一条兼良(かねら)作とも伝えられる。祇園(ぎおん)林の鴉(からす)である東市佐(ひがしのいちのすけ)真玄(まくろ)が、中鴨(なかかも)の森の鷺(さぎ)である山城守(やましろのかみ)津守正素(つもりまさもと)の女(むすめ)を思いそめ所望するが拒まれ、仲間を梟合(きゅうごう)し中鴨を攻めた。黒い鳥の真玄方には鵄(とび)出羽法橋(ほうきょう)、鶏(にわとり)漏刻博士が、白い鳥の正素方には鶴(つるの)紀伊守、青鷺信濃守(しなののかみ)らが集い、一大合戦となった。鴉方が敗れ、鴉の真玄は高野山(こうやさん)に登り、仏法僧の手で出家、勝者の正素もともに念仏修行した、という筋。『精進(しょうじん)魚類物語』より後出で、これと並ぶ異類小説である。

[秋谷 治]

『横山重・松本隆信編『室町時代物語大成2』(1974・角川書店)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鴉鷺合戦物語」の意味・わかりやすい解説

鴉鷺合戦物語
あろかっせんものがたり

室町時代の物語。一条兼良 (かねら) の作というが不明。烏真玄が鷺正素の娘に求婚し,侮辱されたことから,カラス類とサギ類の合戦となり,カラス方が負け,真玄,正素ともに出家するという筋。異類物,擬軍記物の代表作

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