江戸時代における雑税の一種。幕府や藩から営業を許可された商工業者が,その代償に収益の一部を献金または年々税として上納したもの。本来は献金的性格を持っていたが,のちには税率が定められて毎年賦課されるようになった。したがって運上と一括して取り扱われる例が多い。また,冥加は個人に対するものと商工業者の組合である株仲間に対するものとに分けることができる。江戸時代の田制,税制についての代表的な手引書である《地方凡例録(じかたはんれいろく)》によると,各種の運上と並んで醬油屋冥加永,質屋冥加永,旅籠屋(はたごや)冥加永の例が紹介されており,醬油屋冥加はその醸造高に応じて年々賦課し,質屋の場合は軒別に賦課し,旅籠屋冥加は飯盛女を置く宿屋に対して年々賦課した。ほかに酒の醸造高に対して賦課する酒造冥加や,油絞り冥加,あるいは各種の名目を持つ冥加が大名領をも含めて数多く存在した。
8代将軍徳川吉宗による享保改革で株仲間による商業統制が開始され,それが田沼政治に受け継がれてさらに強化されると,商工業者の多くは鑑札の交付を受け,その株数を制限して領主の保護の下で営業の独占を行い,そのかわりに収益の一部を冥加として上納した。この場合,冥加は一定の年限を限って賦課される例が多く,短いのは1,2年,長い場合は7年や10年のものもあり,満期になると再び願い出て鑑札の再交付を受けて営業の継続と冥加の上納を命ぜられた。冥加の上納にあたっては冥加金,冥加銀として金納を原則としたが,ときには米または物品を納入した。職人などは冥加つとめと称して無料で領主に奉仕し,あるいは人足などを提供した。領主財政が困窮すると領主はたびたび冥加金の上納を強要し,そのかわりに苗字帯刀の特権を与える例もみられるようになった。明治維新を迎えると,政府は〈商法大意〉を発布して諸問屋株による独占を解放し,株仲間に対する冥加はしばらくは旧慣によって徴収し,この間に租税制度の改革を進め,漸次その名称を廃止して国税に編入する措置をとった。
執筆者:吉永 昭
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…したがって,直接課税の意味を含まなかったが,近世に入って課税を意味するものとなった。また,本来は各種営業に対する課税の中で,一定の税率を定めて納めさせるものを運上と称し,免許を許されて営業する者が,その利益の一部を上納するものを冥加(みようが)と呼んで区別した。前者は小物成に属し,後者は献金に属するが,現実には運上も冥加も同一の意味に混同して使われている場合が多い。…
※「冥加」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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