秋まきのムギ類を栽培する場合に行う特殊な管理作業。まだ,伸長生長を始めていない匍匐(ほふく)状態(ロゼット状態)のときに植物体の上から,両足やローラーなどで,3~4回,鎮圧(踏圧)する。関東地方に例をとると,12月から翌年2月10日前後(このころ,伸長生長を開始する)にわたって行う。植物体は折り曲げられ,傷つけられ,地面は圧せられる。その後作用として,植物体の葉色は濃くなり,乾生形態(乾生植物の項を参照)をとるに至り,根は長くなる。また,浸透圧は高く,稈(かん)は強くなるが,養・水分の移動が不活発となり,主稈などの幼穂の生育が一時的に抑制され,さらに,分げつ,とくに有効分げつが多くなり,穂ぞろいもよくなる。凍害,干害,霜柱の害,風による土壌飛散の害を防ぐものとして,古くより内外で行われ,増収効果が認められている。しかし,ムギの生育状態に応じて行うことがたいせつで,不適当な状態や時期に麦踏みを行うと,逆効果を生ずることがある。
執筆者:川田 信一郎
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