家庭医学館 「黄疸のいろいろ」の解説
おうだんのいろいろ【黄疸のいろいろ】
血液中にビリルビンが一定量以上に増えて組織に蓄積(ちくせき)する結果、皮膚や眼球結膜(がんきゅうけつまく)が黄色みを帯びた状態を黄疸といいます。ビリルビンは、古くなった赤血球(せっけっきゅう)(赤血球の寿命は120日)が壊されるとき、その中のヘモグロビン(血色素(けっしきそ))からつくられ、健康な人では血液1dℓ中に0.2~1.0mgみられます。これが2~3mg以上になると、白目(しろめ)や肌が黄色くなり、尿が(尿の泡も)茶褐色のビール色を帯びてきます(ビリルビン尿(にょう))。これは肝(かん)・胆道疾患(たんどうしっかん)を示す重要な徴候(ちょうこう)で、軽視できない症状です。
●黄疸がおこるしくみ
老廃赤血球から産生されたビリルビンは、血中をアルブミンと結合して肝臓(かんぞう)へ運ばれ、つぎに肝細胞内に送られ、肝細胞内でグルクロン酸と結合し(抱合(ほうごう)という)水に溶けやすい形になり、毛細胆管(もうさいたんかん)→肝内胆管(かんないたんかん)→肝外胆管(かんがいたんかん)へと、しだいに太い胆管を経て、十二指腸(じゅうにしちょう)へ排泄(はいせつ)されます。この過程で、肝臓内でグルクロン酸抱合を受ける前のものを間接型(かんせつがた)(非抱合型(ひほうごうがた))ビリルビン、抱合後のものを直接型(ちょくせつがた)(抱合型(ほうごうがた))ビリルビンと分けて呼びます。
このビリルビンの産生から排泄までの過程のどこかに障害があれば黄疸が生じますが、間接型が多い場合は、水に溶けにくいためにビリルビン尿はみられません。逆にビリルビン尿であれば直接型が多いことを表わし、肝臓の異常や胆道閉塞(たんどうへいそく)によることを示します。
以上のことから、黄疸を肝前性(かんぜんせい)(肝臓に入る以前の機構の障害による)、肝性(かんせい)(肝臓自体の病変による)、肝後性(かんごせい)(肝臓を出た後の障害による)に分けることもできます。
●黄疸のいろいろ
溶血性黄疸(ようけつせいおうだん) 赤血球が壊れやすくなり、グルクロン酸の抱合力以上にビリルビンが産生過剰になった状態で、溶血性貧血などでみられ、血中に間接型ビリルビンが増えます。
間接型が増加する黄疸には、ジルベール病など、一部の体質性黄疸(たいしつせいおうだん)も含まれますが、よくみられるのは肝性、肝後性の、主として直接型ビリルビンが血中に増加するためのもので、①~③のようなものがあります。
①肝細胞性黄疸(かんさいぼうせいおうだん)
急性(きゅうせい)ウイルス性肝炎(せいかんえん)、薬剤性肝障害(やくざいせいかんしょうがい)、慢性肝炎(まんせいかんえん)の急性増悪期(ぞうあくき)、肝硬変(かんこうへん)、肝細胞(かんさいぼう)がん、アルコール性肝障害(せいかんしょうがい)、自己免疫性肝炎(じこめんえきせいかんえん)などで、肝細胞の壊死(えし)が広範におよぶ結果、ビリルビンの処理が円滑に行なわれなくなったことでおこります。
②肝内胆汁(かんないたんじゅう)うっ滞性黄疸(たいせいおうだん)
毛細胆管(もうさいたんかん)から肝内胆管の間の異常でおこります。薬剤性肝障害、原発性胆汁性肝硬変(げんぱつせいたんじゅうせいかんこうへん)、原発性硬化性胆管炎(げんぱつせいこうかせいたんかんえん)などのほか、女性ホルモンの関与が想定される妊娠性反復性肝内胆汁(にんしんせいはんぷくせいかんないたんじゅう)うっ滞症(たいしょう)があります。
③閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)
肝外胆管の閉塞により胆汁が十二指腸に排泄されないためにおこります。悪性腫瘍(あくせいしゅよう)、結石(けっせき)、炎症などが原因です。
体質性黄疸(たいしつせいおうだん) 10歳前後から、過労などを契機に黄疸が出現しては自然に消える状態をくり返す黄疸で、原因疾患によって直接型、間接型ビリルビンのいずれかが増えます。生命にかかわるものではありません。
●黄疸の検査・診断と治療
血液検査(肝機能検査)を行ない、薬剤性が疑われる場合は(日常使用する薬で生じる黄疸も少なくない)薬剤感受性試験、腹部超音波検査、CT検査を、必要に応じて肝血管造影、逆行性胆管造影(ぎゃっこうせいたんかんぞうえい)、肝生検(かんせいけん)を行ないます。治療は、薬剤が原因の場合はすぐに服用を中止します。手術が必要なのは閉塞性黄疸のみで、ほかの黄疸は内科的に治療されます。