文芸戦線(読み)ぶんげいせんせん

精選版 日本国語大辞典 「文芸戦線」の意味・読み・例文・類語

ぶんげいせんせん【文芸戦線】

文芸雑誌。大正一三年(一九二四六月から昭和七年(一九三二七月まで刊行。「種蒔く人」のあとを受けて創刊青野季吉指導の下にプロレタリア文学運動の中心的発表機関として大きな役割を果たしたが、後に分裂して労農芸術家連盟機関誌となり、ナップナルプの機関誌「戦旗」派と対立して「文戦」派を形成した。

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デジタル大辞泉 「文芸戦線」の意味・読み・例文・類語

ぶんげいせんせん【文芸戦線】

文芸雑誌。大正13年(1924)6月創刊、昭和7年(1932)7月廃刊。「種く人」のあとを受けて青野季吉らが創刊。プロレタリア文学運動の指導的役割を果たしたが、のちに分裂して「戦旗」と対立した。

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百科事典マイペディア 「文芸戦線」の意味・わかりやすい解説

文芸戦線【ぶんげいせんせん】

プロレタリア文学の代表的な雑誌の一つ。《種蒔く人》廃刊のあとを受けて1924年6月,金子洋文小牧近江平林初之輔青野季吉らが創刊,葉山嘉樹林房雄平林たい子らの新人を出した。1927年労農芸術家連盟(労芸)の機関誌となったが,労芸の分裂後はナップの《戦旗》派と対立した。1932年7月廃刊。通巻95号。
→関連項目蔵原惟人黒島伝治藤森成吉文芸時代前田河広一郎

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改訂新版 世界大百科事典 「文芸戦線」の意味・わかりやすい解説

文芸戦線 (ぶんげいせんせん)

プロレタリア文学の代表的な雑誌の一つ。1924年(大正13)6月創刊,32年(昭和7)7月廃刊。全95冊。《種蒔く人》のあとをうけて青野季吉,金子洋文,前田河(まいだこ)広一郎,平林初之輔ら13名が初め同人雑誌として創刊。25-26年に葉山嘉樹《淫売婦》《セメント樽の中の手紙》,黒島伝治《銅貨二銭》,林房雄《林檎》,山田清三郎《幽霊読者》,青野《自然生長と目的意識》などが発表され,プロレタリア文学の新しい発展の中心となった。さらに27年には黒島《橇》,平林たい子《施療室にて》などの佳作がのったが,文学運動の四分五裂の抗争期をへてこの雑誌には社会民主主義の立場にたつ労農芸術家連盟の青野,前田河,葉山,平林らが残り,いわゆる〈労芸派〉〈文戦派〉の機関誌として,ナップ派の《戦旗》と鋭く対立した。31年《文戦》と改題,32年5月に労芸が解散して7月に廃刊となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「文芸戦線」の意味・わかりやすい解説

文芸戦線
ぶんげいせんせん

文芸雑誌。 1924年6月~32年7月。 25年1~5月休刊。 95冊。関東大震災 (1923) による『種蒔く人』の廃刊のあとをうけて発刊。青野季吉金子洋文,小牧近江らが主導者となり,特に青野の『「調べた」芸術』 (35) や「目的意識論」はプロレタリア文学の方向を決定した。以後分裂を重ねながらも,青野,平林たい子葉山嘉樹らが活躍し,プロレタリア文学の第2の闘争期を形成したが,ナップ系の「政治の優位性理論」とは終始一線を画し,やがて『戦旗』に主導権を奪われて衰微した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「文芸戦線」の意味・わかりやすい解説

文芸戦線
ぶんげいせんせん

文芸雑誌。『種蒔(ま)く人』同人の青野季吉(すえきち)、小牧近江(おうみ)らが1924年(大正13)6月同人誌として創刊。葉山嘉樹(よしき)、黒島伝治、平林たい子、青野らの作品や評論を掲載し、この期のプロレタリア文学運動の中心的、指導的役割を果たした。同人が参加していた日本プロレタリア芸術連盟が分裂した27年(昭和2)6月、同人主流派は労農芸術家連盟を結成、以後その機関誌となった。11月の労芸分裂以降、山川均(ひとし)らの『労農』を支持する立場を固定し、青野、葉山、前田河広一郎(まえだこうひろいちろう)らが拠(よ)って共産党支持のナップ派と対立したが、分裂・脱退が続き弱体化した。31年1月より『文戦』と改題。32年7月廃刊。通巻92冊。復刻版がある。

[祖父江昭二]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「文芸戦線」の解説

文芸戦線
ぶんげいせんせん

1924年(大正13)6月「種蒔く人」を継承して小牧近江(おうみ)・青野季吉(すえきち)・金子洋文(ようぶん)・山田清三郎らが創刊したプロレタリア文学雑誌。25年12月に結成された日本プロレタリア文芸連盟の機関誌的存在。32年(昭和7)7月の廃刊まで全95冊。ほかに葉山嘉樹(よしき)・平林たい子・林房雄・千田是也・中野重治らが評論・小説を書いた。政治的には社会民主主義の立場をとり,ナップ派の「戦旗」と鋭く対立した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「文芸戦線」の解説

文芸戦線
ぶんげいせんせん

昭和初期のプロレタリア文学雑誌
1924年創刊。'28年全日本無産者芸術連盟(ナップ)結成後は青野季吉 (すえきち) ・前田河広一郎・平林たい子・葉山嘉樹 (よしき) ら中心の,社会民主主義派の機関誌となり,'32年廃刊。

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