1893年に制定された実業補習学校規程によって発足した教育機関で,学齢後の勤労青年に,小学校の補習と職業に必要な簡単な知識,技能を習得させることを目的とした。工業育成のために下級技術者の養成を必要としたところからうまれ,ドイツの〈補習学校Fortbildungsschule〉(フォルクスシューレの卒業生を入れる)が参考とされた。実業補習学校が本格的に発展するのは第1次世界大戦後である。第1次大戦後,重化学工業育成のために職業教育のいっそうの普及が課題となり,また社会運動の高揚と普通選挙の実施が日程にのぼる状況の下で,青年の〈思想善導〉が必要となった。そこで,1920年実業補習学校規程が改正され,職業教育とともにあらたに公民教育が目的となった。大正年間,学校数,生徒数とも飛躍的に増え,1915年にくらべ25年にはおのおの2倍(学校数1万5316校,生徒数約105万人)となった。工業振興をねらったが,実際には実業補習学校の圧倒的多数は農村に存在し,発足時も農村青年が自発的につくった夜学会が基盤となっていた。中等学校への進学要求をもっていた青年にとって,実業補習学校は働きながら学べる唯一の場であったが,上級学校への進学はとざされており正規の中等教育として扱われなかった。そのため,中等教育の〈代位〉形態といわれ,青年期教育の二重構造を代表するものと考えられている。35年青年訓練所と合併,青年学校となった。
執筆者:大串 隆吉
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明治中期,勤労青少年に小学校教育の補習と簡易な実業教育を施すことを目的として設立された学校。1893年(明治26)の実業補習学校規定にもとづく。修業年限3年以内で,日曜・夜間・季節を限っての教育も認めたことから急速に普及。大正中期以降は職業教育に加え公民教育も重視された。青年訓練所との関係が問題となり,1935年(昭和10)青年訓練所と統合して青年学校となった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…第2次大戦後は実業教育と称することは少なく,ほぼ同様の教育は産業教育あるいは職業教育と称されている。実業教育の萌芽は70年代からみられたが,井上毅文相のもとで94年に実業補習学校規程および実業教育費国庫補助法が制定されて政府が積極的に奨励策をとりはじめると,おりからの日本資本主義の発展のもとで急激に発達しはじめ,実業学校令(1899)および専門学校令(1903)の制定により体系的に整備された。実業学校は,当初から実業学校として創設されたものが大部分であったが,農事講習所,蚕業講習所などのように,当初は他省所管の施設で後に文部省所管の実業学校となったものもある。…
…青年に例をとると,近代化の過程で解体のすすんだ〈若者組〉などの地方青年組織を,内務省と文部省は自覚的な青年や地方名望層の指導を求めて地域青年会(青年団)として再編させ,国民教化態勢強化のための地方改良運動の展開と通俗教育調査委員会設置(1911)などの施策のなかで幾度か訓令を発して,地域共同体における伝統的秩序と国家意識を浸透・定着させる修養団体として育成した。低廉な労働力形成のねらいから設置されていた実業補習学校(1893)は,のちに軍部の要請でつくられた青年訓練所(1926)と合体して青年学校となる(1935)が,政府は青年団員にこれらへの入学を奨励(のちに義務化)して,国民教化,労働力陶冶,兵士養成を一体化させたのである。地域共同体に基礎をおいた団体育成によって国民教化をすすめる方法は婦人に対しても同様であって,日清戦争出征兵士慰問を契機に組織された婦人会をはじめとして,地方改良運動,教化総動員,隣組の組織化,国防意識の高揚などに積極的に動員をはかり,青年とともに教化活動の重要な担い手として育成した。…
…1935年に公布された青年学校令によって,実業補習学校と青年訓練所とが合併して発足した勤労青年教育機関。1926年に発足した青年訓練所は,16歳から徴兵年齢までの青年に軍事教練を施すことを目的としていたため,青年学校本科の教科の37%は教練科であった。…
※「実業補習学校」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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