黒絵式(読み)くろえしき

  • くろえしき くろヱ‥

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

古代ギリシア陶器の装飾様式の一つ。黒像(こくぞう)式ともいう。赤褐色もしくはクリーム色の素地(きじ)の上に、人物や動物など主題となる図像の部分を黒い顔料でシルエット(影絵)風に塗りつぶし、その細部、たとえば鼻、耳、衣装のひだや模様を、焼成後に尖筆(せんぴつ)で線刻する。このような技法は紀元前7世紀ごろから、東方化様式の陶器の影響を受けて徐々に開花し、前6世紀以降アテネ(アテナイ)を中心に著しい発展をみた。主題は神話や英雄伝説が多い。前6世紀中ごろの黒絵式陶器に健筆を振るった陶画家としてリドスやネアルコスが知られるが、アッティカ黒絵式陶器を最高水準に高め、その真価を示したのはエクセキアスであった。彼は人物や衣装の細部を細密画風に克明に描写したばかりか、そのモチーフを単に神話の説明に終わらせず、そのなかに秘められた深い人間感情を表現した。現存する彼の主要作品に、英雄アイアスが自害をしようとしている主題を描いたアンフォーラ(ブローニュ美術考古博物館)、陣中で将棋をさす英雄アキレウスとアイアスを描いたアンフォーラ(バチカン美術館)、酒神ディオニソスの航海を描いたキリクス(ミュンヘン古代美術館)などがある。

 黒絵式陶器は、前530年代に、これとはまったく逆の赤絵式技法が考案されたため、以後急速に衰退した。しかしパンアテナイア(パナテナイア)のアンフォーラなど、特殊な器はその後も黒絵式を踏襲している。

[前田正明]


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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 古代ギリシアの壺の一つ。また、その装飾様式。赤褐色またはクリーム色の生地(きじ)に黒色塗料で図像をシルエット(影絵)で描き、細部を線刻したもの。前六世紀以降、アテナイを中心に発展したが、赤絵式技法に押されて衰退した。黒像式。

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