ウシの鼻面の皮膚面(鼻鏡(びきょう))に、浅い溝によってつくりだされる紋様をいう。鼻紋は、ヒトとかサルの指紋のように個体に固有で一つとして同じ型のものはなく、一生変わらないので個体識別に用いられる。とくに斑(はん)のない単色の個体、たとえば黒毛和種などの登録の際に利用されている。
ウシの鼻端は鼻唇平面とよばれ、平坦(へいたん)でつねに腺(せん)分泌物でぬれている。これをよくぬぐい、ローラーでインキを塗り、吸収力のよい中程度の厚さの西洋紙を当てて鼻紋を写し取る。とくに上唇に近いところはもっとも個体差が明確である。鼻紋は遺伝するので、これによって血縁関係を推定することもできる。同性双子では両個体雌雄どちらであっても互いに類似点が多く、異性双子の場合ではそれほど類似しないといわれる。鑑定のために、中央に溝のある有溝型、さらにそれは羽脈状と短羽脈状に、また溝のない無溝型は放射状と波状に、それぞれ類型区分がなされている。しかし、これら四型ははっきり区分されるものでなく、中間の移行型もみられる。
[西田恂子]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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