和牛(読み)ワギュウ

デジタル大辞泉 「和牛」の意味・読み・例文・類語

わ‐ぎゅう〔‐ギウ〕【和牛】

家畜の牛で、日本在来の品種。小形で、黒毛のものが多く、かつては使役用・肉用原型を最もとどめているのは山口県萩市の見島牛で、天然記念物明治大正時代から欧米の品種を導入して改良された肉用種として、黒毛和種黒毛和牛)・褐毛和種無角和種日本短角種がある。
[類語]雄牛雌牛子牛種牛役牛乳牛肉牛牧牛猛牛水牛野牛バイソンバッファローヤク

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

共同通信ニュース用語解説 「和牛」の解説

和牛

日本固有の肉用種で、黒毛和種・褐毛あかげ和種・無角和種・日本短角種の4品種とそれらの交雑種を指す。品種改良を通じて肉質を向上させてきたブランド牛が各地で生産されている。乳用牛であるホルスタインの雌に和牛の雄を掛け合わせた「交雑種(F1)」など他の国産牛とは区別される。政府は和牛の生産量を2018年の約14万9千トンから、35年度までに30万トンに倍増させることを目指している。

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

精選版 日本国語大辞典 「和牛」の意味・読み・例文・類語

わ‐ぎゅう‥ギウ【和牛】

  1. 〘 名詞 〙 日本在来の牛、およびこれを改良したもの。古来飼われていたものは小形の黒牛で、明治・大正時代に欧州牛の交配を受けて現在では純粋な在来種はほとんどいない。黒毛和種・褐毛(あかげ)和種・無角和種・日本短角種の四品種に分けられ、かつては使役・食肉の兼用とされた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「和牛」の意味・わかりやすい解説

和牛 (わぎゅう)

日本の在来牛を明治以降に輸入した外国種で改良した肉牛の総称。かつては水田での役利用も兼ねた兼用種であったが,最近では肉専用種へと改良方針が変えられた。基礎となった日本の在来種としては,山口県の萩市の西の海上にある見島に産する見島牛が現存し,天然記念物に指定されている。見島牛は黒色の小型の牛で,体型は前軀(ぜんく)が勝っていて性質は温順,もっぱら農耕,駄載に利用されている。全国で約140万頭飼われている和牛の90%近くを占める黒毛(くろげ)和種は,この見島牛に類する日本在来種に,明治末期にヨーロッパから輸入されたブラウン・スイス種(兵庫,鳥取),ショートホーン種(広島),デボン種(島根)などを交配し,体格の向上,早熟性,早肥性の改良を図ったものである。毛色は褐色をおびた黒色で,体下部や四肢の内側はやや淡色。体重は雄750kgぐらい,雌450kgぐらい。肉質が優れており,筋繊維が細く,肥育したものでは脂肪がその間に細かく沈着したいわゆる霜降肉となる。外国種に比べてやや晩熟で,一日増体量も不十分であり,後軀の肉付きなど改良を要する点もあるが,粗放な飼養管理にも耐える体質強健な肉牛である。1944年に品種として認められ,48年全国和牛登録協会で登録が行われている。かつては中国地方が伝統的な産地であったが,現在では九州,東北に主産地が移行しつつある。褐毛(あかげ)和種は熊本県の在来牛にシンメンタール種を交配したもの。毛色は赤褐色または黄褐色で,体格は黒毛和種よりやや大型である。体積に富み,発育のよいのが本種の特徴であるが,肉質は黒毛和種に劣る。高知県にも飼われているが,この系統は朝鮮牛の影響を強く受けており,目の周囲,角,ひづめ,鼻鏡の黒いものが〈毛分け〉と称して喜ばれる。和牛の約10%を占めている。無角和種は山口県の黒色の在来牛をアバディーン・アンガス種で改良した品種。頭数も約5000頭と少なく,減少傾向にある。毛色は黒色で,無角が特徴。早熟早肥であるが,皮下脂肪が厚くなりやすい。これらの3品種の登録はすべて全国和牛登録協会で行われているが,このほか日本原産の肉用種としては日本短角種が岩手,青森,秋田の諸県を中心に約4万頭飼育されている。これは在来の南部牛にイギリスから輸入したショートホーン種,デーリー・ショートホーン種を交配し,改良したもので,57年に品種として認められた。毛色は褐色だが,濃淡の程度はさまざまで,糟毛(かすげ)のものもある。体格は黒毛和種よりやや大型。発育がよく,ことに山野に放牧したときの採食性に優れているのが長所の一つである。肉質は佳良とはいいがたいが,雌牛は哺育が巧みで,泌乳能力も高い。
ウシ
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「和牛」の意味・わかりやすい解説

和牛
わぎゅう

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の動物。家畜ウシの日本在来品種の俗称で、以前は役肉兼用種であったが、現在では役用に利用されることはほとんどなく、肉用種とみなされている。その起源については、朝鮮牛にもっとも似ており、和牛、朝鮮牛ともにインド系のゼビューに由来する遺伝的要素よりはヨーロッパ系の原牛型の要素のほうが強く、ユーラシア中央部を東西にまたがる牛飼い文化のなかから、朝鮮半島を介して移入したものと考えられている。純粋な在来種とみられるものは山口県萩市見島(みしま)に天然記念物として保存されている見島牛である。毛色は黒が多く、白斑(はくはん)のあるもの、褐毛、すだれ毛のものもあり、小形で後躯(こうく)の発育が悪い役用型のウシで、非常に晩熟である。明治時代に入ってから和牛の改良が要求されるようになり、1900年(明治33)から外国種であるシンメンタール、エアーシャー、ブラウンスイス、デボン、ショートホーンなどが輸入され、和牛との交雑が行われた。これらの交配は計画性を欠いていたため成績は芳しくなく、10年間ほどで絶えてしまったが、やがて双方の短所・長所が正しく認識されるようになり、1912年(大正1)に改良過程にあるウシを改良和種と名づけて地域ごとに具体的な方針を確立して改良が進められた。この間登録組織と審査標準が一元化されてきて、1944年(昭和19)に至って各県ごとに改良されて名称づけられていた和牛は改良和種の時期を終わり、固定品種に到達したと結論され、中国地方を中心に広く分布している有角黒毛の品種を黒毛和種(くろげわしゅ)、熊本県・高知県を主産地とする有角褐毛の品種を褐毛和種(かつげわしゅ)、山口県の一部に飼育されている無角黒毛の品種を無角和種とよぶことに定めた。1948年に全国和牛登録協会が発足して以来、登録は一元的に行われるようになった。その後、岩手県などにいた南部牛にショートホーンを交配してつくられたものが固定品種とみなされ、日本短角種とよばれるようになり、ここに和牛4品種が成立した。体重は雄700キログラム、雌400キログラムぐらいである。

[西田恂子]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「和牛」の意味・わかりやすい解説

和牛
わぎゅう

狭義には日本の在来種の牛をいうが,広義には在来種に外国種を交配した改良種も含める。在来種は役用専用で黒毛,体躯は小さく晩熟であるが体質は強健で,山口県の見島牛にその名残りをみる。改良和種のおもなものは黒毛和種褐毛和種,無角和種,日本短角種で,いずれも役肉兼用種として扱われていたが,現在では肉用型に改良が進められている。黒毛和種は在来種とデボン種,ブラウンスイス種,褐毛和種は阿蘇牛 (熊本産) とシンメンタール種,無角和種は在来種とアンガス種,日本短角種は南部牛とショートホーン種を,それぞれ交配して育成された。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「和牛」の解説

和牛

 わが国で肉用に改良されたウシ.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android