赤新聞(読み)あかしんぶん

精選版 日本国語大辞典 「赤新聞」の意味・読み・例文・類語

あか‐しんぶん【赤新聞】

〘名〙 興味本位の暴露記事やセックス記事を売り物にしたり、会社内情個人私行をあばいて、ゆすり、たかりをしたりする新聞。明治中期の大衆紙「万朝報」が淡紅色用紙を使ったところから呼ばれるようになった。
社会百面相(1902)〈内田魯庵精神家「赤新聞に堕落書生の標本として書立てられる」

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デジタル大辞泉 「赤新聞」の意味・読み・例文・類語

あか‐しんぶん【赤新聞】

扇情的な暴露記事を主とする低俗な新聞。明治中期、大衆紙「万朝報よろずちょうほう」が赤みを帯びた用紙で、暴露摘発記事を載せたことによる。→イエロージャーナリズム

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「赤新聞」の意味・わかりやすい解説

赤新聞
あかしんぶん

読者の情緒に強く訴えるエロやゴシップあるいは暴露記事などを扇情的に扱って、売れ行き増大を図る興味本位の低俗新聞。日本の新聞は明治20年代後半に入ると、しだいに大衆化したが、それにつれて、東京商業新聞の間で激しい販売競争が起こった。1892年(明治25)黒岩周六(涙香(るいこう))が創刊した『萬朝報(よろずちょうほう)』は、「艶種(つやだね)」や上流階級の「蓄妾(ちくしょう)」問題などプライバシーを暴露するような記事で売り出したが、その新聞が淡紅色の用紙を使っていたところから、赤新聞ということばが生まれたといわれる。こうした扇情的な低俗新聞は同じころアメリカにも出現した。それをイエロー・ジャーナリズムという。

[高須正郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「赤新聞」の意味・わかりやすい解説

赤新聞 (あかしんぶん)

明治20年代の後半に東京の商業新聞がはげしい販売競争を演じたとき,つやだねや暴露記事で売行きの増大をはかった新聞を赤新聞といった。1892年黒岩涙香の創刊した《万朝報》が〈娯楽的毒舌新聞〉(正岡芸陽の言葉)として売り出したのがその最初で,同紙が淡紅色の用紙だったことからこの名が生まれたともいう。昭和の初め《読売新聞》が正力松太郎新社長のもとで部数を増していったころにも,新聞界の一部にこれと似たセンセーショナリズムの傾向が見られた。
イェロー・ジャーナリズム
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百科事典マイペディア 「赤新聞」の意味・わかりやすい解説

赤新聞【あかしんぶん】

明治20年代後半に,つやだねや暴露記事を武器に激しい販売競争を演じた東京の商業紙をさしていった。現在では一般に低俗なセンセーショナリズムを売物とする新聞の総称。語源的には政府要人・官僚・政党幹部などの非行を指摘・攻撃した《万朝報(よろずちょうほう)》の用紙が淡紅色だったことに由来するといわれる。→イエロー・ジャーナリズム

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「赤新聞」の意味・わかりやすい解説

赤新聞
あかしんぶん

低級な興味本位の新聞。明治時代にセンセーショナリズムで人気のあった黒岩涙香の『万朝報』が淡紅色の用紙であったため,この呼称が起った。 (→イエロー・ジャーナリズム )  

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世界大百科事典(旧版)内の赤新聞の言及

【イェロー・ジャーナリズム】より

…部数,利潤の拡大を至上目標に,スキャンダル,センセーショナリズムを売物にするジャーナリズムへの蔑称(べつしよう)。日本で赤新聞といわれるのがほぼ同義。1890年代,巨大企業と化したピュリッツァーの《ワールド》紙と,ハーストの《ニューヨーク・ジャーナル》紙は,常軌を逸した競争を展開する。…

【ジャーナリズム】より

…また黒岩涙香の《万朝報》や秋山定輔の《二六新報》は,それぞれに政・財界人のめかけ囲いを暴露したり,民営タバコのもうけがしらの私行をあばいたり,吉原の娼妓を解放したりなどしてセンセーショナルな紙面構成をはかり,廉価なこととあいまって大衆的な新聞となった。とくに《万朝報》の用紙がうす桃色だったこともあって赤新聞とさげすまれたが,これは既成体制の選良層が放ったものであった。 前世紀末のアメリカでは,行政機構の腐敗や独占資本の権勢を公衆にむかって告発するマックレーキングmuckrakingという報道活動がおこなわれた。…

※「赤新聞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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