販売収入,広告収入などを経営の基盤とし,利潤の獲得を前提とする新聞。日本では明治初期の新聞発達初期には,大(おお)新聞と小(こ)新聞があり,前者は政論中心であってそのほとんどは政府・政党から資金援助を受けることの多い御用新聞や政党新聞で,利潤獲得は第二義的であったのに対し,後者はそのような援助を受けることが少なく,企業存続のために利潤を得る必要があった。日本の商業新聞はこの小新聞を源流にして,明治後期から急速に発展して現在に至っている。その間,政党の解散・衰退などに伴い大新聞の多くも商業新聞への転換を図ったが,小新聞による買収や改題,統・廃合など多くの変転を経ている。
欧米の商業新聞では,イギリスのクオリティ・ペーパー(高級紙)と大衆紙のように,新聞としての性格や記事,内容はもちろん,その購読者層までも明確に分別されていることが多く,アメリカでもフランスでも商業新聞の大部分は,政党からの財政も含めて独立independentの立場をとりながらも,明確な政治的立場を掲げている。それに対して日本の商業新聞の読者はあらゆる階層,職種に広がって,ことに全国紙は世界の日刊紙中屈指の巨大部数をもっており,また政治的には〈不偏不党〉をうたい,独自の政治的立場をもたず,左右両翼の中点に立つことが多いという特徴がある。このことは,日本の言論統制史上の経過や,資本主義形成期に政治的〈無色〉情報を求める商工読者の増加,日本人の伝統的中庸性などさまざまな要因が考えられる。
→大新聞・小新聞 →新聞
執筆者:山本 武利
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