六訂版 家庭医学大全科 「肩こり」の解説
肩こり
かたこり
Stiff shoulder
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな病気か
後頭部から肩、および肩甲部にかけての筋肉の緊張を中心とする不快感、違和感、鈍痛などの症状を伴う病気です。厚生労働省の国民生活基礎調査(2008年)によると、男性の1000人に58人、女性の1000人に123人が肩こりを訴えています。
「
原因は何か
上肢と体幹は、骨としては鎖骨のみでつながっており、肩甲骨を介して肋骨の上に浮いているだけの状態になっています。このため、
肩こりとは症状を表した病名であり、肩こりを来す病気にはさまざまなものがあります。基礎疾患を伴わない(身体に明らかな損傷のない)いわゆる「肩こり」と、整形外科(
基礎疾患を伴わないいわゆる肩こりは、若者の場合は、骨の成長が筋・腱の成長よりも急速なために生じる体の柔軟性の低下や不良姿勢に起因した場合が多く、働き盛りの年代では、長時間の精神的緊張下での単純作業中に発生することが多いといわれています。高齢者では、老化に伴う基礎疾患を伴った肩こりの割合が多くみられます。
肩こりを誘発する基礎疾患としては、胸郭出口(きょうかくでぐち)症候群や
頸部から出て上肢へ行く神経は、いったん頸部の筋肉間や鎖骨下を通過しますが、この部位で神経や血管が引っ張られたり圧迫されたりすると、首、肩、腕、手などの痛みやしびれが生じます。これを胸郭出口症候群といい、肩こりが続発することもあります。
また、頸椎の
治療の方法
基本的には両肩周囲の筋肉の疲労や過緊張が原因になるので、筋肉や姿勢に対するアプローチが有効なことが多いです。疼痛が強い場合には、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬の内服、パップ剤の
予防するためには、肩甲骨のもち上げや両腕挙上体操を行い、僧帽筋などの筋力を日ごろから鍛えておきます。頸部や肩甲骨のストレッチは血液の循環を促進させて筋を弛緩し、慢性化した局所的な筋緊張の緩和に有効です。自分で筋肉をバランスよく動かしていくことが重要です。
労働中は、作業中の姿勢に気をくばり、作業机と作業者の体との距離が遠すぎないように、肘や手首を台の上に置いて仕事ができるように工夫することも大切です。
病気に気づいたらどうする
症状が
豊田 宏光, 中村 博亮
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報