日本がアメリカ合衆国の大学にならって導入した,一般的な学力試験によらない入学者選抜方法の一種。アメリカの大学では一般的に個別の筆記試験は行わず,SATや高校の成績(GPA),小論文,面接,推薦状等の多様な観点から入学者を選抜するが,このプロセスに教員はほとんど関与せず,専門の事務部門であるアドミッションズ・オフィス(アメリカ)(入学オフィス(アメリカ))が従事する。日本に導入された類似の方法による入試がAO入試と呼ばれているが,実態としては推薦入試を拡張した入試となっている(ただしAO入試は高等学校長による推薦は不要)。能力・適性を重視し,目的意識や熱意・意欲を重んじる試験形態で,書類審査(志望理由書など),面接,小論文等の選考方法の組合せによって選抜され,オープン・キャンパスでの事前面談や,独自の課題が課される場合もある。一般の入試より選考期間が長く,実施している大学の9割以上が8~10月に出願時期を設定し,合格発表時期は早い傾向にある。
日本では1990(平成2)年度に慶應義塾大学が初めて導入し,2000年度から国立3大学で開始。2015年度は計534大学1329学部で実施された。とくに私立大学で広がっており,AO入試による入学者は10%超(2015年度)となっている。9割の大学で選考時に何らかの学力把握措置を講じるが,推薦入試とならび大学生の学力低下の温床になっているとの指摘がある。大学の経営安定のため定員の早期確保に使われているとの批判もある。このためAO入試自体の廃止や,学生の学力確保のために入学前教育等の措置をとる大学もある。
著者: 齋藤千尋
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
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