種子から種子までの生活を、1年以内で終える草本植物をいう。砂漠などでは、降雨直後に発芽し、10日ほどで開花結実し枯死する植物もあるが、普通は1か月から8か月の生育期間をもつ。夏型、冬型、エフェメラル(短日)型の各一年生が区別されるが、いずれも1回繁殖型で、1回だけの開花結実で枯死する。生育地は砂漠、耕地、路傍など、不適な自然条件や頻繁な人為的攪乱(かくらん)などを受ける所に多いが、乾燥、攪乱、踏みつけなどに特別に適応しているわけではなく、不適な生育条件を生活環を短く終えることで克服している。すなわち、個体の可塑性(外圧で形が変わる性質)は大きく、植物体の大きさや生育期間の長短などと無関係に、ごく短期間で種子生産を完了できる。植物の生活型としては、もっとも進んだ段階にあると考えられる。
[大澤雅彦]
…多年生植物については,地上部が残るか残らないかを,越冬芽(耐乾芽など,植物の生活にとって不適当な条件を切り抜けるための抵抗芽一般を含む)が地表面からどれくらいの高さにあるかによって区別する。ラウンケルの生活形を整理すると,まず,地上植物(芽が地表より30cm以上高いもの),地表植物(芽の位置が地表30cmより低いもの),半地中植物(芽が地表にあるもの),地中植物(芽が地中にあるもの),夏緑性一年生植物(不適な時期を種子で過ごすもの)の区分ができ,さらに地上植物は,芽の位置が地表から30m以上の高さのもの(巨大地上植物),8~30mの高さのもの(大型地上植物),2~8mの高さのもの(小型地上植物),0.3~2mの高さのもの(矮小(わいしよう)地上植物)や,多肉植物,着生植物などに,地中植物は土中植物,水生植物などが区別されている。ラウンケルはこの類型化をもとにして,世界のさまざまの地域に生育する植物各1000種を無作為に選び出し,類型化された生活形がそれぞれどのような割合で分布しているかをパーセントで示した生活形標準表normal spectrum of life formを作成した。…
※「一年生植物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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