日本大百科全書(ニッポニカ) 「WEEE指令」の意味・わかりやすい解説
WEEE指令
うぃーしれい
電気電子機器廃棄物(Waste Electrical and Electronic Equipment)に関するEU(ヨーロッパ連合)指令(Directive 2002/96/EC of the European Parliament and of the Council of 27 January 2003)のことであり、英文名称を略してWEEE指令と通称されている。2005年8月13日から施行された。EU諸国はこの内容に則した国内法令を整備しなければならない。なお、WEEE指令を補完し、設計・製造時点から有害物質を排除するよう義務づけるRoHS(ローズ)指令が同時期に採択された。これらの指令が必要とされた背景には、EU域内で電気電子機器廃棄物が急増しており、それらによる人的被害および環境汚染の防止が求められていることがある。
WEEE指令は、第一に、電気電子機器廃棄物の発生を減らすこと、第二に、廃棄物の処分を減らすために、回収ならびに再使用、リサイクルおよび再生利用を行うこと、第三に、電気電子機器の製造から処分までの全過程にかかわる製造事業者、流通事業者および消費者が環境面の行動改善を行うことを求めている。
その対象とされる電気電子機器のカテゴリーと対象商品は以下のとおりである。
(1)大型家庭用電気製品 冷蔵庫、洗濯機、電気こんろ、電子レンジ、エアコンなど
(2)小型家庭用電気製品 電気掃除機、アイロン、ヘアードライヤーなど
(3)IT(情報技術)・遠隔通信機器 パーソナルコンピュータ、プリンター、コピー機、ファクシミリ、電話など
(4)民生用機器 ラジオ、テレビ、ビデオ、オーディオアンプ、楽器など
(5)照明装置 蛍光灯、放電灯、高圧ナトリウムランプなど
(6)電動工具 ドリル、鋸(のこぎり)、ミシン、研磨盤、溶接機など
(7)玩具(がんぐ) 携帯型ビデオゲーム、ビデオゲーム機など
(8)医療用器具 放射線医療機器、心電図測定器、透析機器など
(9)監視・制御機器 煙検知器、熱制御機器、家庭用または研究用測定機器など
(10)自動販売機 ホットドリンク販売機、瓶缶用自動販売機など
これらの廃棄物が一般ごみへ混入することを防止するために分別回収が求められており、EU諸国は、最終所有者および販売事業者が無料で返還できるシステム、新製品販売時に無料で引き取るシステム、また、製造事業者による個別の回収システムの整備を保証しなければならない。一般家庭からのこれら廃棄物には、住民一人当り年間4キログラムという回収目標が設定されている。製造事業者は、対象機器の適正な廃棄を義務づけられ、製品カテゴリーごとに定められている再使用・リサイクル・再生利用目標値を達成しなければならない。これらの廃棄物の管理にかかわる費用の負担は、各製造事業者の責任と定められているが、2005年8月13日以前に販売されたものについては市場シェアに応じて分担される。
しかし、予定どおりの成果をあげていないことがわかり、EU委員会は2008年12月に改正を提案した。その後の検討を経て2011年10月にEU議会環境委員会は、一部修正して改正提案を承認した。それは具体的には、2016年に85%という回収目標を定めている。また、他の廃棄物といっしょに廃棄されている小型製品について小売店を通じて無料で回収するシステムを導入すること、および、製品に応じて再使用率を5%、リサイクル率を50~75%、再生利用率を70~85%にすることを定めている。なお、付属書Ⅰ(カテゴリー)と付属書Ⅱ(製品リスト)は、RoHS指令に移動することとされた。
[磯崎博司]
『WEEE&RoHS研究会編著『図解 よくわかるWEEE&RoHS指令とグリーン調達――欧州環境規制で取引先が選別される』(2005・日刊工業新聞社)』