放電による発光を利用した光源の総称。封入する蒸気の物質と圧力によって分類され,水銀灯,メタルハライドランプ,ナトリウムランプ,キセノンランプなど多くの種類がある。近年,高圧水銀灯,メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプをまとめてHIDランプと呼ぶことがある。これはhigh intensity discharge lampの略で,高輝度放電ランプまたは高圧放電ランプと訳されている。HIDランプは小型で高出力,高効率,長寿命が特長である。なお,蛍光灯は低圧水銀蒸気中の放電によって生じた紫外線を蛍光物質に当てて可視光に変えている光源で,広い意味での放電灯の一種である。
一般に人工的に光を作りだす方法には熱放射とルミネセンスがある。熱放射は温度放射とも呼ばれ,物体がある温度にあるとき,その原子,分子などの熱振動により光が放出される現象である。白熱電球がその代表例である。他方,熱放射以外の発光の総称がルミネセンスで,放電灯は気体原子によるルミネセンスを利用した光源である。発光ダイオードなどの固体発光素子は固体によるルミネセンスを利用している。
原子は原子核と電子からなり,光の発生に関係するのは最外部軌道の電子である。この電子が何らかの刺激によってそのエネルギーを増し,より外側の軌道に移った状態を励起という。励起状態は不安定なので,励起された電子はエネルギーを光の形で放出して元の軌道にもどる。これが放電灯の発光原理で,放電によって気体原子の電子を励起するのである。
そこで,一般に放電灯は放電管の中に2個の電極が封入されており,この間に電源をつないで放電を起こさせる。ただし,電極にじかに電源をつなぐと安定に動作しない。それは放電の負特性といって,電流が増加すると電極間の電圧が減少する性質があるからである。そこで,チョーク・コイルなどの安定器を電源との間に入れて安定に動作させる。図のA点では放電電流が⊿Iだけ増えると電極間電圧が⊿Vだけ高くなって電流増加を抑制し元のA点に戻る。つまり安定である。電流減少の場合も同様である。B点ではすべてが逆になって不安定である。蛍光灯を含めすべての放電灯を点灯するには安定器が必要である。
執筆者:川瀬 太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
封入ガスや金属蒸気または数種のこれらの混合体内の放電によって発生する光を利用した光源の総称。日本工業規格(JIS(ジス))では、発光するガラス球(管)部分を放電ランプとよび、安定器、照明器具を含めた装置を放電灯といって区別しているが、一般には区別されずに使用されている。放電現象による発光は、原子の励起と電離によって行われ、陰極付近における放電電流密度を増加していくと、グロー放電からアーク放電に移行する。グロー放電を利用するランプとして、対向する両電極を接近させて負グローの発光を利用したのがネオン(アルゴン)グローランプである。また電極を離して陽光柱の光を利用するのがネオン管(灯)である。アーク放電を利用するランプとして、蛍光ランプ、低圧ナトリウムランプ、高輝度放電ランプ(水銀ランプ、メタルハライドランプおよび高圧ナトリウムランプなどの総称でHIDランプともいう)、キセノンランプなどがある。放電ランプの電圧電流特性は負特性で、放電によって電流が増加すると、電極間の電圧が減少する。その電圧減少により、電流はますます増加してランプを破損してしまう。これを防ぐため、ランプと直列に安定器を接続して、電流を制限する方法をとっている。
なお、放電ランプの命名方法としては、(1)動作原理による分類(アークランプ、グローランプ、蛍光ランプなど)、(2)発光に寄与する封入ガスの種類による分類(水銀ランプ、ナトリウムランプ、キセノンランプ、ネオンランプなど)、(3)構造、動作状態による分類(ショートアークランプ、高圧・低圧または超高圧放電ランプなど)、(4)目的、用途による分類(殺菌ランプ、ブラックライトランプ、健康線ランプ、太陽灯など)などがある。
[小原章男・別所 誠]
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「放電ランプ」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また,建築物における自然光の利用法については〈採光〉の項目で述べられている。
[光源の変遷]
現在実用されている光源は白熱電球,放電灯および蛍光灯である。電灯の最初はアーク灯で,1808年H.デービーによって発明されたが,まぶしいのと,炭素蒸気を出して空気を汚すので,もっぱら街路灯に使用された。…
※「放電灯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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