製図用具(読み)せいずようぐ

改訂新版 世界大百科事典 「製図用具」の意味・わかりやすい解説

製図用具 (せいずようぐ)

製図に用いられる器具および用具総称製図器製図機械定規類,ものさし類,製図板鉛筆,消しゴムなどがあげられる。

(1)製図器 これには形式によりイギリス式,ドイツ式がある。いずれもコンパスディバイダーからす口などがそれぞれ大小数本ずつ組み合わされてセットになっている。このうち大コンパスは,ふつう替穂式で,からす口,鉛筆,針先,中継ぎなどをそれぞれ差し替えて使用するようになっている。中コンパス,スプリングコンパスは,墨入れ,鉛筆,ディバイダーともそれぞれ専用につくられる。なお,スプリングコンパスには,中車式と外車式とがあるが,中車式のほうが脚の開閉が迅速であるのに対し,微細な調節は外車式のほうが優れている。

 このほか,ドロップコンパスは,とくに精密な小円の墨入れに便利なようにつくられており,またビームコンパスは,大コンパスでもかけないような大円,または大円弧をかくときに,直定規などに取りつけて使用される。製図器には,以前はイギリス式,ドイツ式のほか,フランス式も用いられたが,現在ではほとんど使用されていない。

(2)定規類 製図に使用される定規には,直定規,三角定規T定規曲線定規その他のものがある。直定規,三角定規,T定規など直線を引くのに用いる定規では,とくに縁の直線部分が正確であることがたいせつで,購入するときは狂いのない,じょうぶな材質のものを選び,また使用にあたって縁を少しでも傷つけないよう,細心の注意が必要であって,とくにナイフをあてて紙などを切るときには,スチール製以外の定規を使用することは厳につつしまなければならない。また曲線をかく場合には,ふつう雲形定規が使用されるが,これはいろいろの曲線を巧みに組み合わせた何枚かのものがセットになっており,これらの中から適当な部分を選んで曲線をかく。曲線定規にはこのほか,しない定規(たわみ定規),R定規(カーブ定規),自在曲線定規などがある。

(3)製図板 製図するとき製図用紙をはりつける台板であるが,一般には専用の台脚に取りつけ,高さ,角度を自在に調節できるようになっている。また板の表面はビニルシートばりにしたものが多く,なかにはこれを磁性シートばりとして,スチールプレートによって用紙をはりつけられるようにしたものもある。大きさはA0用,B1用,A1用などがある。

(4)ものさし 現在ではアクリル製が一般であるが,竹製,スチール製のものも使用される。目盛は1mmで,一部に0.5mmが刻まれているものがよい。なお,縮尺図面をかくときには,三角スケールとか,製図機械用縮尺スケールなどを用意すればよい。

(5)型板(テンプレート) 図の一部をならいがきするときに用いる,種々の形を打ち抜いた薄い板。いろいろの大きさの円,楕円,記号類,ボルトなどの形状が切り抜いてあるので,容易かつ能率よくそれらの図形をかくことができる。

(6)製図機械 近年では,T定規や三角定規,分度器などの機能をあわせもたせた製図機械が広く使用されてきている。これは互いに直角に固定された2個のスケールを,ベルトプーリー機構,あるいはレール機構などによって,製図板上のいずれの位置にも正確にかつ軽快に平行移動できるようにしたもので,スケールには目盛(1mm,0.5mm,あるいは各種縮尺目盛)が施されているから,必要な長さの線を直ちに引くことができる。またハンドル部分にはバーニヤつきの分度器が取りつけられており,スケールを必要な角度に簡単に固定することができるようになっている。また最近では,大型電算機と連動させ,きわめて複雑な図形でも能率よく高精度でかくことができる自動製図機が各方面において広く実用されてきている。この自動製図機は,制御装置の指令によって作動する2方向のパルスモーターの回転によって,X-Y方向に動くプロッターと考えることができ,その使用方法には電算機とプロッターを直接連動させるオンラインシステムと,電算機で処理した結果を一度磁気テープなどに記録し,のちにプロッターだけを別に動かすオフラインシステムがあるが,一般にはオフラインシステムによることが多い。しかし,オンラインシステムによれば,設計者と電算機が図形を通しての対話を行うことも可能であり,一般にこの場合には高速データ処理ができるCRT(cathode ray tubeの略。ブラウン管)を用いたディスプレー装置が使用される。

(7)その他 鉛筆は,芯のかたさにより17種のものが市販されているが,製図用としては,HB,F,H,2H,3H程度のものを用意すればよい。最近では,いちいち芯を削らないでもよいような0.7mm,0.5mm,0.3mmなどの細芯ホルダーが盛んに使用されている。用紙を製図板にはりつけるのには,ある厚さをもった専用のテープを用いるのがよく,ふつうの事務用のテープでは,薄すぎるのと粘着力が強すぎてはがすのが困難であるので適当でない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「製図用具」の意味・わかりやすい解説

製図用具【せいずようぐ】

製図に必要な道具類の総称。大きな製図機械をはじめ,製図器械,定規類,寸法測定用の物差,分度器,製図板類,そして鉛筆,消しゴムなどが含まれる。製図器械はコンパス烏口(からすぐち),ディバイダーなど数種類をセットにしたものが広く利用されている。これには英国式,ドイツ式,フランス式などがある。また最近では,コンピューターと連動させ,きわめて複雑な図形でも能率よく高精度で描くことができる自動製図機が各方面において広く実用されている。→CAD

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