CCV(読み)しーしーぶい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「CCV」の意味・わかりやすい解説

CCV
しーしーぶい

control-configured vehicleの略で、航空機の発展方向の一つと考えられる飛行機。現在も機上に取り付けられているコンピュータや電気・油圧系統を多重装備することによって、たとえ一部に故障を生じてもシステムの機能を正常に保たせることができる。この特性を利用すると、飛行機固有の安定性機体強度を弱くしても、舵(かじ)を自動的に動かすことによってそれを補うことができ、機体を小型・軽量化して、生産・運航コストの節減や性能の向上を図ることができる。このような自動化された操縦装置をあらかじめ考慮に入れて設計された飛行機をCCVとよんでいる。

 すなわち、現在の普通の飛行機では固有の安定性を保たせるため、必要とするよりやや大きめの尾翼をもたせているが、CCVでは常時自動的に舵面を操作して姿勢を保たせるので、尾翼の面積を最小限の大きさに抑えることができ、空気抵抗や重量を節減できる。また、舵面をコンピュータ操作させることで、従来とまったく異なった運動性をもたせることができる。たとえば、飛行機の姿勢を一定に保ったまま飛行コースを変えたり、逆に機首方向をある角度に保ったまま一定のコースを維持して飛行したり、あるいは飛行コースに沿って姿勢を変えながら飛行するなどの運動ができ、その結果着陸進入や戦闘行動が容易になる。現在はまだ実用化されてはいないが、この特徴軍用機にとって大きな魅力であるため、世界各国でさかんに研究開発が続けられている。

[落合一夫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「CCV」の意味・わかりやすい解説

CCV
シーシーブイ
control configured vehicle

戦闘機などの運動能力を高めたり,突風の影響を減らしたり,フラッタ振動の発生を抑えるために,主翼操縦翼面を小さくしても安定性を維持できるよう,コンピュータによる能動的な制御を主体として設計された航空機。運動能力向上機とも呼ばれる。通常の飛行機ではまず安定性を考慮して尾翼の大きさや主翼の上反角を決め,それをどう操縦するかを考えて舵の大きさを決める。さもないと,操縦桿からちょっと手を離しただけで危険な状態に陥いることになり,安心して乗っていられない。しかし飛行機が機敏な動きをするためには,むしろ不安定な飛行機の方が都合がよい。そこで飛行性能にとって最も望ましい設計,たとえば翼を小さくするなどの形状を考えたうえで,コンピュータの自動制御技術によって自動的,人工的に安定性をもたせたのが CCVである。これで機体の小型化,軽量化,操縦性の向上がもたらされ,燃料費の節約,機体の疲労寿命の延長,離着陸時の安全性向上にもつながる。 (→安定性 , 操縦性 )

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