新古典派シカゴ学派の重鎮。ロンドン郊外のウィレスデン生まれ。1932年ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス(LSE)を卒業し、リバプール大学、LSEなどで教え、1951年にLSEで博士号を取得した。同年アメリカに移住し、バッファロー大学、バージニア大学、シカゴ大学の教授を歴任し、1979年からシカゴ大学名誉教授。「取引コスト」の概念を導入し、ミクロ経済学で企業の役割を理論づけたほか、環境問題の解決に影響を与えた「コースの定理」でも知られる。1991年に、「経済の制度的構造・機能における所有権の重要性を発見し、明確化」したことにより、ノーベル経済学賞を受賞した。
1937年の論文「The Nature of the Firm」で、市場を利用するには情報入手、契約、検査、紛争処理などのさまざまな取引コストを考慮する必要があるとし、取引コストを負担する企業の存在意義を積極的に評価することにより、企業理論を発展させる契機となった。1960年の論文「The Problem of Social Cost」では、公害など外部不経済があっても取引コストがなければ、発生者と被害者の自発的交渉によって、発生者に責任を負わせるかどうかに関係なく、最適な資源配分が達成され、経済的資源の問題は市場が解決するとの「コースの定理」を導いた。税制、補助金、規制といった政策ではなく、自由交渉によっても外部不経済問題を解決できると主張した。この二つの論文は、1988年出版の主著『The Firm, the Market, and the Law』(『企業・市場・法』)に収録されている。
コースの定理は当事者間の自発的交渉の結果生じる最適性の命題として知られており、市場メカニズムが機能する領域が想像よりも大きいことを示す。コースの定理によって、法制度と経済分析の関係を考察する法経済学という新しい学問が確立した。
[金子邦彦]
『宮沢健一・後藤晃・藤垣芳文訳『企業・市場・法』(1992・東洋経済新報社)』
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