MHD発電(読み)えむえいちでぃーはつでん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「MHD発電」の意味・わかりやすい解説

MHD発電
えむえいちでぃーはつでん

磁気流体発電のことで、電気伝導性をもつ流体を磁界に垂直な方向に流し、電磁誘導によって生じる起電力を利用する発電法。MHD磁気流体力学magnetohydrodynamicsの略。

 磁界の中で導体を運動させれば、磁束の変化によって導体に起電力が生じ、電流が発生する。この導体は、通常の発電機では銅線であるが、導体でありさえすれば、液体でも気体でもよい。気体の温度が2000~3000℃になれば、気体の原子から電子が飛び出し、プラズマ(高度に電離し、イオンと電子が一様に分布した状態)となり、気体は導電性を帯びる。とくに電離しやすいセシウムやカリウムを混ぜれば、電気伝導度はいっそう高くなる。プラズマが磁界の中を通過すれば、磁束の変化によって、磁界と垂直に、かつプラズマの運動方向とも垂直な方向に誘導起電力が生じる。プラズマの両わきに電極を置けば、そこに電荷がたまり、電極を導線でつなげば、導線中に電流が流れる。プラズマの温度がいかに高いとはいえ、その電気伝導度は銅などに比べたら桁(けた)違いに小さい。電気伝導度の低さを補うためには、磁束密度やプラズマの流速を思いきって高めることが必要である。そのため、強力な電磁石と秒速数百~1000メートルを超える流速が、MHD発電の欠くことのできない条件である。通常の電磁石では消費電力が大きいので、超電導磁石が不可欠である。MHD発電の熱源は、高温ガス冷却炉のような原子炉に求められるべきである。

桜井 淳]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「MHD発電」の意味・わかりやすい解説

MHD発電
エムエイチディーはつでん
magnetohydrodynamics power generation

電磁流体力学を応用した発電法。従来の発電機の固体の導電体の代りに,高温で電離状態になった導電性の気体であるプラズマをダクトに流して直角に磁界を加え,そのいずれにも直角方向に起電力を発生させる方法。磁界の中に高温プラズマを通し,直接に電磁的に電気を得るので,熱電子発電,熱電発電などとともに直接発電の一分野とされる。研究開発中の発電方式なのでいろいろな方法や可能性があるが,いまのところ電磁界内に高温高速の導電性ジェット流を通過させ,これと平行に設けた対向電極の間に直接に電気を発生させる方式が研究されている。直接に発電するため熱効率が高く,同時に磁界を通過したあと高温の排ガスを火力発電機の蒸気タービンに誘導して火力発電をすると全体の熱効率は著しく上がる。両者を合せた総合熱効率は従来の火力発電より5割以上高い 50%程度といわれている。将来の発電方式として研究,開発が盛んである。高温ガスの電離を促すための添加剤や使用するガスや燃料,またガスの通路の材質,冷却技術など多くのむずかしい課題をかかえている。発電機の形式としては,ファラデー型,ホール型,ダイアゴナル型がある。アメリカ,日本,ロシアなどで開発が進められている。

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