日本大百科全書(ニッポニカ) 「VTR・CM」の意味・わかりやすい解説
VTR・CM
ぶいてぃーあーるしーえむ
video tape recorder CMの略称で、ビデオテープレコーダー(VTR)によって制作されたコマーシャル(CM)をいう。映像や音声が磁気テープを使用して、電気的に記録されている。
素材面からCMを分類すると、現在その主流をなしているのは、フィルムに撮影されたフィルム・コマーシャルとVTR・CMである。かつてVTR・CMは、制作が簡単で画像が鮮明、スローモーションやストップモーション、逆回転などの特殊効果も手軽にできるという長所がありながら、設備や技術面などを考慮すると割高なところがあった。一方、フィルム・コマーシャルには、(1)画面や音声に高度なテクニックを駆使することで訴求力を大きくすることができる、(2)繰り返し何度でも使用できるので放送1回あたりの制作費は安くなる、(3)放送前によく確認できるので失敗がない、といった特長があり、かつてはフィルム・コマーシャルの勢いは相対的に強かった。ところが、VTR・CMの制作技術およびVTR機器そのものの技術革新が年々進み、1976年(昭和51)から77年にかけてVTR・CMの占める割合が急増、1977年は「VTR・CM元年」といわれる。そして、CMの素材も「フィルムからビデオへ」という映像史の必然的転換を迫られた。確かに、VTR・CMは省力化、無事故化、クリーンなど多くの特長をもっており、現在テレビ局側でもVTR自動送出設備をもたないところはない。だが、フィルム・コマーシャルに決定的な欠陥があるわけではなく、むしろその特長は不変である。2000年(平成12)現在、VTR・CMが相対的に多いとはいえ、フィルム・コマーシャルとの並存状況は当分の間続きそうである。
[伊藤誠二]