個別の製品,商品やサービス価格の動きではなく,それらを総合した価格の水準や変動を知るための指標として,卸売物価指数や消費者物価指数がある。これと同様に個別の銘柄ごとの株価の動きではなく,それらの株価を総合的にとらえて,株価全体(あるいは株式市場全体)の水準や変動を知るための指標として,原則的には毎日計算され発表されているのが,株価指数である。したがって株価指数は,株価全体の水準や変動をできるだけ正確に把握できるように,いろいろと計算方式をくふうしている。それらの計算方式は,平均を出すものと総合計を出して比較するものとに大別される。後者は基準時点の総合計を100として指数化しているのが一般的である。個々の株価には権利落ちがあるので,それを修正して連続性を保つようにくふうされている。日本の場合,平均方式の代表は,東証225種日経ダウ平均株価(日経ダウといえば通常これをさす)で,総合計方式の代表は東証株価指数である。
銘柄数n,基準時点の株価P0,比較時点の株価P1,売買高や上場株式数などのウェイト要因を基準時点Q0,比較時点Q1とすると各算式は次のように表される。
(1)単純平均法 各銘柄の個別株価指数を計算し,その算術平均を求める。
(2)単純総和法 各銘柄の株価を基準日および比較日でおのおの加算し,後者を前者で除して求める。
(3)加重総和法 単純法は重要性の異なる銘柄の指数の変化,極端にいえばわずか数銘柄の小型株の強烈な動きに影響され,不自然な指数が出ることがある。これをカバーするため,売買高や上場株式数をもって加重する。
(1)の計算方式がラスパイレス式,(2)がパーシェ式である。
(4)フィッシャーの理想算式 前述のラスパイレス式とパーシェ式では結果が異なる。この差異を相殺するため,両者の幾何平均を求めたものである。この数式は指数の数学的性質を満足させるものであるが,権利落ち修正が困難であるため,消滅した。
(5)時価総額方式 上場株式時価総額(株価に発行済株式数を乗じた額)を計算の基礎としたもので,基準時の時価総額を100とし,その後の時価総額を指数化する。すなわち,加重総和式の加重要因を上場株式数としたものである。古くはアメリカのスタンダード・アンド・プアーズ社が当初233種から,現在ではこれを500種に拡大して発表し(SP500種平均株価),ダウ工業株30種平均株価と併用される代表的指数となっている(後述)。トロント,ロンドン,パリ,東京の各株式(証券)取引所もこの指数方式を採用している。
東京証券取引所では当初,市場第一部の代表225銘柄のダウ式修正平均株価(東証225種ダウ式平均株価,通称東証旧ダウ)を採用してきたが,これは本質的には単純平均であり,わずかな小型値がさ株の動きに左右されやすいという不備を改めると同時に,世界共通の指数とするため,1969年より時価総額方式の株価指数(東証株価指数)を発表するようになった(ただしダウ式平均株価は日経ダウ平均株価の名称で日本経済新聞社に引き継がれた)。現在,日本において日々発表されている株価指数の代表的なものが東京証券取引所が発表するこの東証株価指数であるが,そのうち最もよく利用されるのが東証株価指数(総合)で,これは市場第一部全銘柄の総合指数である。東証第一部に関しては,このほか規模別(大型株・中型株・小型株)株価指数,業種別(28業種)指数があり,また東京証券取引所第二部では300種総合指数がある。一方,大阪証券取引所第一部では300種総合指数がある。これらはいずれも時価総額を基準とした加重平均法によっているが,東証では別途,単純平均株価も発表している。また日本経済新聞社が引き継いで発表している日経ダウ平均株価(その代表は日経ダウ225種平均株価)も長い間使われてきただけに,相場の連続性をとらえる観点からも欠かせない存在となっている。
世界主要国でのおもな株価指数を列挙すると,アメリカはダウ工業株30種平均株価(通称ニューヨーク・ダウ)のほか,SP(スタンダード・プアー)500種平均株価,ニューヨーク株式取引所普通株指数(以上はニューヨーク株式取引所),アメリカン取引所指数などがある。カナダはトロント普通株300種株価指数,イギリスはFT(フィナンシャル・タイムズ)100種株価指数,ドイツはコメルツ銀行株価指数,フランスはパリ総合50種株価指数,オランダはアムステルダム工業株価指数,スイスはスイス銀行株価指数,イタリアはミラノ株価指数があり,それぞれの国の株式市場動向を代表して示している。このほか,ヨーロッパ関係ではスペインのマドリード取引所指数,デンマークのコペンハーゲン取引所指数,ベルギーのベルギー取引所指数,オーストリアのCA指数,スウェーデンのヤコブソンP指数,ノルウェーのオスロ取引所指数,南アフリカの金鉱株指数がある。また,アジア・オセアニア地域ではオーストラリアがオーストラリア全普通株指数,香港ではハンセン指数,シンガポールではシンガポールST工業株指数を代表とするほかフレーザー指数,SES指数,OCBC指数など,大韓民国では韓国総合指数,フィリピンではマニラ商工業株価指数がある。これらの指数の大半のものは《フィナンシャル・タイムズ》紙に公表されているほか,これらの代表的指数を加重平均した世界株価指数も同紙に掲載されている。
執筆者:佐藤 昌之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
株価の推移や株価水準を示す指数で、代表的な株価指標の一つ。基準時点での株価水準を100として、比較時点での株価水準との比較を容易にできるように、多くの株式についてその価格変動を総合的に指数化したものである。株価指数には、物価指数と同じように算式基準時点のとり方により、いくつかの種類がある。その代表的なものとして相対法と総和法があげられる。
相対法は、各銘柄の株価の個別指数を計算して、算術平均する(相対指数または平均指数という)ことにより求められる。算式は、基準時点の株価をP0、比較時点の株価をP1、銘柄数をnとすると
で示される。株価の短期変動をみる場合に有用で、イギリスで採用されている。
総和法は、各銘柄の株価を合計して指数化する(総和指数)方法で、算式は
で示され、株式の重要度(売買高、上場株式数など)に応じてウェイトを加重するのが一般的である。そこでウェイトをnとすると、加重総和指数の算式は
で示される。売買高を加重した代表的なものとして、フィッシャー方式による株価指数がある。これは、一定期間内の株式市場における株式の流通状態をみようとするもので、株価の変動と売買高の変化から、流通代金の増減を株価変動か売買高かいずれの影響によるものかを分析できるところに特徴がある。そのため、この株価指数は価格指数、数量指数、流通指数の三つで構成されている。フィッシャー方式の欠点は、増資による権利落ちの修正がむずかしいことにある。
上場株式数を加重した株価指数としては、古い歴史をもつアメリカのスタンダード・アンド・プーア社の株価指数が有名で、日本でも1969年(昭和44)から同じ方式による東証株価指数を発表している。この指数方式は、上場株式の時価総額をその計算の基礎としているところから時価総額方式ともよばれ、合理性とコンピュータによる数値計算が可能であるため、各国の株価指数の主流となっている。さらに上場株式全体の評価額によって株式資本の成長性を示すこともでき、証券の国際化時代を迎えて海外株価との国際比較も可能であるなど利点が多い。
[桶田 篤]
株価全般の動向をみるための指標として、一定数の採用銘柄の株価を平均した平均株価も利用されることが多い。これは株価水準の変動を単に金額的に表示したもので、株価指数とは区別される。平均株価は大別して単純平均株価と修正平均株価とがある。権利落ちのたびに大幅に下落するなど連続性に欠ける単純平均株価の欠点を是正したものが修正平均株価で、代表的なものにダウ式平均株価がある。
[桶田 篤]
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