平均株価は株式市場全体の動向をみる指標として重要なものであるが,単純に現状の形成株価で平均すると,新株権利落ちや配当落ちなどでプレミアム分が安くなることにより連続性が途絶え,指標としては不完全なものとなり,長期に利用しえなくなる。この変動要因を修正し,連続性をもたせるため考案されたのが,ダウ式平均株価(ダウ平均株価,あるいはダウ平均ともいう)である。名称の由来は,アメリカの経済統計学者ダウCharles Dowの設立したダウ・ジョーンズ社Dow Jones & Co.,Inc.(著名な日刊経済紙《ウォール・ストリート・ジャーナル》の発行元でもある)で創案され,これを公表したことから,この名称がついたものである。この方法は,株価が権利落ちによる値下がり分を調整するための係数を,権利付き最終価格を基準にそのつど算定するもので,基準日以来の累積した係数をダウ倍率と呼ぶ。個別のダウ式修正株価は単純株価にこのダウ倍率を掛けたものをいうが,市場全体をみるダウ式平均株価の計算は恒常除数によって求められる。
その計算式は次のとおり。権利付き最終日の株価合計をA,同日の恒常除数をN,当該新株落ち相当金額をPとすると,新恒常除数Xはとなり,権利落ち日の株価合計をA′とすると,同日のダウ平均株価D′はとなる。ダウ・ジョーンズ社では1884年に鉄道9種をはじめとする11種平均株価を発表したが,現在ではニューヨーク市場を代表する工業株30種(いわゆるダウ工業株30種平均株価)のほか,鉄道株20種,公共株15種,総合65種をもっている。当初は還元式修正方法がとられたが,1928年の工業株30種平均より現在の恒常除数修正方式に変わり,今日に至っている。日本では,この方式による平均株価は東京証券取引所によって50年9月に初めて算出された。上場株のうち225種につき(大阪証券取引所は250種),開所時の176円21銭(1949年5月16日)を基準としたダウ式平均株価(東証ダウ式平均株価,後述のように東証旧ダウともいう)が発表されている。
ダウ式平均株価は一方では次のような欠点もある。(1)採用銘柄が225種とか30種とかに限定されていること,(2)上場株式数によるウェイトが考慮されていないため,大型株も小型株も同一視され,品薄株や値がさ株の騰落による影響が大きく出ることなどから,市場全体の動きをとらえにくいこと,(3)ダウ倍率が大きくなるにしたがって,実際はわずかな株価の動きが増幅され,誤解を生じやすいことである。これをカバーするため東京証券取引所では60年1月5日を基準日とする新ダウ式平均株価(いわゆる東証新ダウ)を並行して発表したが,実際はほとんど利用されず,69年には廃止され,71年には旧ダウ平均(いわゆる東証旧ダウで,新ダウと区別するためにこう呼ぶ)も廃止し,東証株価指数に切り替えた。ただ旧ダウ平均は統計上の歴史も古く,依然として一般に親しみをもたれている実情にかんがみ,日本短波放送がこれを引き継ぎ,75年5月からは日本経済新聞社により日経ダウ平均株価として継承されている。
→株価指数
執筆者:佐藤 昌之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
株価指標の一つ。単純平均株価には株式に特有な株価変動、たとえば増資新株の権利落ちなどによる株価の急落が現れるなどの欠点がある。これらの欠点を修正し、価格の長期的な連続性を表示するために考案されたものがダウ式平均株価である。アメリカの『ウォール・ストリート・ジャーナル』を発行するダウ・ジョーンズ社が、工業株30種平均をはじめ、数種の株価平均を算出するのに用いているダウ式修正法の算式によっていることからこの名がある。単純平均株価が株価合計を銘柄数で割って求められるのに対し、ダウ式平均株価Xは、株価合計を別途に計算された恒常除数で割って求めるところに特色がある。その算式は
恒常除数は、次の算式から求められる。
額面発行による増資の多い日本の場合、ダウ式平均株価は単純平均株価より高くなる傾向があり、時の経過とともに現実の株価水準と遊離していく。そのため、東京証券取引所では、初め1949年(昭和24)5月16日を基準とする旧ダウ(旧東証修正平均株価指数)を発表していたが、1959年1月5日を基準とする新ダウ式平均株価を並行して発表することになった。その後1968年1月4日を基準とする東証株価指数を発表するようになって、1971年に新・旧ダウとも廃止となった。
旧ダウについては当時の日本短波放送(NSB。現日経ラジオ社)が受け継いで、NSB225種修正平均の呼び名で発表、1975年からは日本経済新聞社が日経ダウ平均株価として発表、1985年からは日経平均株価(日経平均)と改称している。
[桶田 篤]
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…トロント,ロンドン,パリ,東京の各株式(証券)取引所もこの指数方式を採用している。 東京証券取引所では当初,市場第一部の代表225銘柄のダウ式修正平均株価(東証225種ダウ式平均株価,通称東証旧ダウ)を採用してきたが,これは本質的には単純平均であり,わずかな小型値がさ株の動きに左右されやすいという不備を改めると同時に,世界共通の指数とするため,1969年より時価総額方式の株価指数(東証株価指数)を発表するようになった(ただしダウ式平均株価は日経ダウ平均株価の名称で日本経済新聞社に引き継がれた)。現在,日本において日々発表されている株価指数の代表的なものが東京証券取引所が発表するこの東証株価指数であるが,そのうち最もよく利用されるのが東証株価指数(総合)で,これは市場第一部全銘柄の総合指数である。…
※「ダウ式平均株価」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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