気球,ロケット,人工衛星などの飛翔(ひしよう)体に搭載して大気圏外からX線天体の位置を決め,その大きさ,形などを測る装置。高い精度,角分解能を必要とする場合に使われる方法は今のところ二つある。その一つはすだれコリメーターと呼ばれるものである。2枚以上のすだれ状の金属マスクをとおして天空が縞状に見えることを利用する。飛翔体の姿勢が変わるとともに天体はこの縞に見え隠れする。そのようすから天体の位置,大きさ,形を測るのである。こうしてX線天文学の初期にはさそり座のSco X-1の位置が精密に決められ,初めてX線星に光学天体が対応することが見いだされた。はくちょう座のCyg X-1の位置決定はそれがブラックホールの有力候補であることを推定する糸口になった。100個を超えるX線星が光学的に同定されている。またすだれコリメーターによるX線源の像合成はかに星雲や人工衛星〈ひのとり〉と〈ようこう〉による太陽X線フレアの構造の決定に使われている。
もう一つの方法は数keV以下の軟エネルギー領域では金属表面に斜入射するX線が全反射することを利用するX線の反射望遠鏡である。これはX線のエネルギー,波長に制限はあるが結像式の本格的な望遠鏡できわめて高い感度をもっている。本格的には大型天文衛星HEAO-2(アインシュタイン衛星)が焦点距離3.4m,口径56cmの望遠鏡によって1978-81年にわたって活躍し,X線天文学に新しい局面を開いた。日本のX線天文衛星としては87年打上げの〈ぎんが〉,91年打上げの太陽X線観測衛星〈ようこう〉,93年打上げの〈あすか〉がX線反射望遠鏡を搭載している。
執筆者:小田 稔
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