日本大百科全書(ニッポニカ) 「X線顕微鏡」の意味・わかりやすい解説
X線顕微鏡
えっくすせんけんびきょう
光(可視光)のかわりにX線を用いる顕微鏡。顕微鏡の分解能、すなわち二つの点を見分けることのできる能力は、このとき用いる光の波長が小さいほど高くなる。このため、波長のきわめて短いX線(100オングストローム以下。1オングストロームは1億分の1センチメートル)を用いると、可視光線(その波長4000オングストロームぐらい)を用いたときより分解能はあがるはずである。しかし、X線に対する媒質の屈折率はほとんど1に近く、屈曲しにくい。このため、可視光線のような屈折率になるレンズを用いた顕微鏡をつくることは不可能であることから、種々のくふうがなされている。そのうち、反射型のX線顕微鏡は、X線が結晶表面にすれすれに入射したとき、表面で全反射することを利用する。これは、レンズというより、反射鏡(凹面鏡)を用いた顕微鏡ということができる。X線顕微鏡の分解能は種々の理由によってあまり向上せず、15ナノメートル程度である。収束した電子ビームをターゲットに透過させ、それによる点光源X線を用いるX線顕微鏡も開発されており、透過型とよばれる。この装置に用いるX線は高強度であることが必要とされるため、放射光施設のX線が利用される。
[大槻義彦]