日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカエイ」の意味・わかりやすい解説
アカエイ
あかえい / 赤鱏
軟骨魚綱トビエイ目の科や属の総称、またはその1種の名称。アカエイ科Dasyatidae(英名stingrays)は胸びれと腹びれで扁平(へんぺい)な体盤を形成すること、尾が鞭(むち)状で背びれや尾びれがないこと、尾部の背部に1~3本の逆棘(とげ)をもった毒針をもつことなどが大きな特徴である。尾部の毒棘の縁辺には逆棘が並んでいるため、刺されるとひどい傷を負い、出血や痛みを感じ、意識障害や麻痺(まひ)症状をおこすことがある。棘が刺さっている場合には抜いて止血をする。痛みが強い場合はやけどをしない程度の温湯(40~45℃)に患部をつけると痛みが和らぐ。アカエイ属Hemitrygonは、日本近海からはアカエイH. akajei、オナガエイH. bennetti、イズヒメエイH. izuensisなど5種が知られている。
種としてのアカエイ(英名whip stingray)は1841年(天保12)に日本の南西部よりとれた標本に基づいて発表されたもので、体盤の腹面が黄色で、とくに縁辺部は濃黄色であることによって他種と区別できる。全長1メートルを超える。生殖方法は非胎盤型の胎生で、胎仔(たいし)は自分の卵黄を吸収してしまうと母体から子宮ミルク(母親の子宮壁から分泌される脂質栄養物)を受けて成育する。春に7~25尾の子を産む。北海道以南の日本各地および東シナ海などに分布するが、南日本の沿岸では普通にみられる。砂中に潜っていることが多いので、遊泳者などは踏みつけて刺されないように注意が必要である。おもに延縄(はえなわ)や刺網(さしあみ)で漁獲され、夏季には煮つけや酢みそにすると美味である。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、準絶滅危惧(きぐ)(NT)に指定されている(2021年8月時点)。
[仲谷一宏 2021年9月17日]