エレファスゾウ(読み)えれふぁすぞう(英語表記)elephas

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エレファスゾウ」の意味・わかりやすい解説

エレファスゾウ
えれふぁすぞう
elephas
[学] Elephantidae

現生アジアゾウおよびアフリカゾウで代表されるゾウ。真象類ともいう。エレファスは、ゾウあるいは象牙(ぞうげ)を意味するギリシア語のエレファントスelephantosに由来していて、ゾウ一般をさしている。

 今日ではアジアゾウとアフリカゾウの2種類しかいないが、かつては38属162種もの多種多様なゾウの仲間たちが、グリーンランド南極、オーストラリアを除く、地球上の各大陸で繁栄していた。それらのうちゾウの最古祖先とされているものは、北アフリカの約5500万年前の第三紀暁新世(ぎょうしんせい)末の地層から化石で発見されたフォスファテリウムPhosphatheriumとよばれる原始的な哺乳(ほにゅう)動物である。

 次の始新世から漸新世にかけて、つまり、4000万~3500万年前ころには、さまざまなゾウの先祖たちが現れている。しかし、ゾウの仲間がもっとも繁栄したのは次の中新世で、2000万~500万年前のころであった。その時代に発展を遂げたものは、マムート、ゴンフォテリウムステゴドンなどとよばれるマストドンゾウの仲間であった。また、下顎(かがく)の牙(きば)が下に伸びて後ろに曲がった奇妙な姿のデイノテリウムDeinotherium、下顎がシャベル状のアメベロドンAmebelodonなどの、さまざまなゾウの先祖たちが、地球上に広く分布していた。

 その後のいまから500万年前の鮮新世のころになって、それらの古いゾウたちの子孫とともに、また、それらから分かれて新しく進化したゾウ、つまりエレファスゾウの仲間たちが現れ、地球上の広い範囲に分布した。このエレファスゾウには、現生のアフリカゾウやアジアゾウのほか、マンモスゾウナウマンゾウなども含まれている。また、このエレファスゾウの仲間たちの多くは、人類の出現と発展とによって絶滅に追い込まれることとなった。

 エレファスゾウのグループのものは、先祖のゾウたちに比べて、体が大形化し、四肢が長く、頭部は前後が短縮して上下に高くなり、上顎(じょうがく)の1対の牙(切歯)が長く伸びている。また、上下のあごには咬板(こうばん)とよばれる板状のものの集合からできている大きな臼歯(きゅうし)があり、ものをかみ合わせる咬合(こうごう)面には畝(うね)状の構造がみられるのが特徴とされている。このことは、森林の生活者で、おもに木の葉を食べていた先祖のマストドンゾウとは異なり、エレファスゾウは地球上に広く展開した草原で草を食べる生活に、より適応したゾウであったことを示している。

[亀井節夫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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