オオオニバス(読み)おおおにばす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオオニバス」の意味・わかりやすい解説

オオオニバス
おおおにばす / 大鬼蓮
[学] Victoria

スイレン科(APG分類:スイレン科)の水生多年草で、熱帯中南米原産。池、沼、河川などに自生し、葉は円形直径2メートルにも及び、縁がたらいや盆のように15センチメートルほど立ち上がり、水面に浮かぶ。葉の大きなことでは世界有数で、葉の上には50キログラム前後の人ならば乗ることもできるといわれる。花は二夜しか咲かず、いろいろ話題の多い植物である。属名のビクトリアは、栽培に初めて成功したビクトリア女王(1世)の名を記念して名づけられた。

 一般にオオオニバスといわれるアマゾニカV. amazonica (Poepp.) Sowerby (V. regia Lindl.)は、旧名レギア(女王の意味)の名でも知られ、アマゾン流域からボリビアギアナに分布する。葉の直径は約2メートルで、葉の縁は立ち上がり、表面は光沢のある緑色裏面葉柄は刺(とげ)で覆われ、葉脈は赤みを帯び、全体が赤茶色になる。つぼみ外側の褐色部分にも刺がある。花は純白で強い芳香があり、夕刻から開き深夜に満開となる。翌日の日中は閉じるが、夜にはまた開き、やがて水没する。2日目の花は濃桃色である。パラグアイオニバスV. cruziana Orbignyはパラグアイパラナブラジル)の原産で、前種に比べやや小形で、葉の直径は1~1.6メートル。すべての点で前種と似るが、葉の縁が高く立ち上がること、葉の裏が緑色であること、つぼみの外側に刺がないことでアマゾニカと区別できる。

 この仲間は水温28℃前後、つねに強い陽光の下で栽培する。花のあとエンドウ大の種子が2か月余りでできるので、採種し水中に保存する。育苗は2~3月に田土に種を播(ま)き、浅水にして発芽させる。開花には6~8か月を要する。

[坂梨一郎 2018年6月19日]


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改訂新版 世界大百科事典 「オオオニバス」の意味・わかりやすい解説

オオオニバス
royal water lily
water platter
Victoria regia Lindl.

ボリビアからアマゾン地方原産のスイレン科の多年生水生植物。スイレン科の中での最大型種。オニバスに似てより大型であるところからこの名があるが,オニバスとは別属の植物である。直径1~2mとなる大型円形の浮葉を生じ,葉縁は5cmぐらい上曲してたらい状となる。葉面は緑色で光沢があり,葉柄,葉裏脈上,花茎や萼片には多数のとげがある。花は直径30cm前後,芳香ある白色花。開花後,ピンクから紅色に色変りをして3日後に咲き終わる。夜咲性である。近縁種にパラグアイオニバスV.cruziana d'Orbigny(英名Santa Cruz water lily/water platter)がある。

 観賞用として世界各地の植物園などの大型温室内で栽培される。栽培には高温を要し最低20℃以上を保つ必要がある。種子はwater maizeと呼ばれ,南アメリカでは食用にされる。大型浮葉は子どもを乗せられるほどの浮力があることで有名である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオオニバス」の意味・わかりやすい解説

オオオニバス(大鬼蓮)
オオオニバス
Victoria regia

スイレン科の水草で,アマゾン地方原産。巨大な葉を浮べるので有名である。泥中に根茎があり,長い葉柄で水面に浮ぶ葉は直径 2mにも達し,周縁は水面上にそり返って浅い缶のふたをさかさに浮べたようになる。葉の裏面に放射状に葉脈が走り,鋭いとげがある。このとげは萼や果実にもある。花は直径 20cmほどの白または淡紅色でスイレンに似ている。夜間に開花し,芳香がある。この属の植物にはもう1種 V. cruzianaがあり,やはり南アメリカの原産でパラグアイオニバスとも呼ばれるが,オオオニバスほど巨大ではない。

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百科事典マイペディア 「オオオニバス」の意味・わかりやすい解説

オオオニバス(大鬼蓮)【オオオニバス】

アマゾン地方原産のスイレン科の水草。径2mに達する巨大な円形の浮葉は,縁が上曲して,たらい形をなす。葉と花の柄,葉裏,萼片には鋭いとげがある。芳香の強い,径30cm内外の花を2日にわたり夜だけ開き,花色は白〜紅に変化する。観賞用に栽培する場合,30℃ぐらいの水温が必要で,実生(みしょう)でふやす。
→関連項目熱帯植物

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