改訂新版 世界大百科事典 「オニバス」の意味・わかりやすい解説
オニバス
prickly water-lily
Euryale ferox Salisb.
池や城の堀などで巨大な葉を広げ,水面をおおうスイレン科の一年生水草。ミズブキとも言う。日本全国,沿海州,中国,インドなど東アジアに分布するが,アメリカにも帰化している。
根茎は短い円筒状で,葉をらせん状につける。葉形は生長とともに変化し,第1葉は針状,幼葉はほこ形の葉身をもち,成葉では円形の葉身をもった楯状葉となり,直径は2m以上にも達する。葉柄,葉身の脈上にはとげが多い。花は長い花柄上に単生し,径約3cm,萼片は4枚で緑色,花弁は多数で紫色,おしべは多数。子房は下位で8室に分かれ,各室の側壁に多数の胚珠をつける。種子は球形,径1cmほどで肉質の仮種皮につつまれる。オニバスの花は夏から秋にかけて咲くが,水面上に出て開く花と閉鎖花の2種類があり,閉鎖花では小さなつぼみの時に受粉することが知られている。大型の種子はデンプンを多く含んでおり,食用とされる。
執筆者:伊藤 元己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報