翻訳|cut glass
ガラスの装飾加工法の一つ,およびこれによる製品。日本では切子(きりこ)あるいは切子ガラスと呼ばれる。ガラスの表面に,石または金属製の回転砥石を研磨剤とともに押しつけて,溝を切ったり曲面を削ったりする方法で,多くは透明な鉛ガラス製の器の装飾に用いられる。技法の性質上,曲線をカットすることは不可能であり,デザインは,直線の集積によって構成される幾何学的な文様を基本とする。また,砥石の直径,断面の形状により,カット面は変わり,線溝の断面も変化する。V字状の断面をもつ線溝を交錯させて,プリズム的な表現効果をあげる手法が最も一般的である。
カット・グラスは古代においてすでにみられ,年代を確定しうる最古の遺例として,アッシリア王サルゴン2世(在位,前721-前705)の銘をもつガラス瓶がある。ローマ時代に入るとカット技法は広く採用され,線刻状のカットに加えて,複数の色層のガラス面を浮彫状にカットする,いわゆるカメオ・グラスも発達した。東洋では,パルティアやササン朝ペルシアのガラス器に広く用いられた。正倉院蔵の〈白瑠璃碗(はくるりのわん)〉は,古代に日本まで運ばれたこの種のカット・グラスの代表的な遺例である。カット・グラスは,イスラム世界においても盛行し,ヨーロッパの近世のガラス工芸にも大きな影響を与えた。16世紀の末にはボヘミアとドイツで大規模に採用されている。17世紀に,不純物を含まぬ透明な鉛クリスタルガラスがイギリスで開発され,カットは効果的な装飾法として,高級ガラス器には不可欠のものとなった。とくにイギリスとアイルランドのガラス工芸は,18世紀後半から19世紀前半にかけて,カット・グラスの最盛期を迎え,製品は世界各国に輸出された。日本のカット・グラスは,江戸時代中期以後,これらのヨーロッパ製品の刺激のもとに発達した。江戸切子,薩摩切子が代表的なものである。
執筆者:友部 直
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ガラス工芸の技法の一つ、およびその製品。わが国では切子(きりこ)ともいう。ガラスの器物の表面に、回転砥石(といし)などで溝を彫り込んで装飾とする方法で、透明で屈折率の高いガラスを用いた場合に、とくに効果がある。砥石の断面の形状と大きさによって溝の断面も変わるが、一般にはV字形の溝によって表面に幾何学的な模様を表すことが多い。色の異なるガラスをかぶせて、表層からカットすることも行われる。透明ガラスの地に赤あるいは青のガラス層をかぶせてカットした薩摩(さつま)切子はその好例である。
カットグラスの起源は明らかでないが、貴石の加工技術がガラス塊に応用されたことに始まると推測される。アッシリア帝国のガラス器に一種のカット技法が認められるが、ヘレニズム、ローマ時代にはとくに発達したと考えられ、それがパルティアやササン朝ペルシアに伝播(でんぱ)し、ガラスの主要な装飾技法となった。正倉院蔵の円形切子白瑠璃碗(るりわん)は、その典形的な例である。また、イスラム・ガラスでも盛んに用いられた。17世紀以降、良質の透明ガラスが開発され、とくにイギリスで華麗な酒杯や鉢などがつくられ、近代のカットグラスの基礎が確立された。わが国では江戸時代にこの技法が導入され、江戸切子、薩摩切子などが製作された。
[友部 直]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…しかしメソポタミアではアッシリア時代末期より透明なガラスの美が発見され,以後不透明色ガラスより透明ガラスが使われるようになった。この傾向はアケメネス朝時代に入ってさらに進展し,無色に近い透明ガラスにカットを施したカット・グラス器を流行させた。パルティア時代に入ってその伝統はやや衰えたが,ササン朝時代になって再興し,カット・グラス製品を大流行させて全世界に輸出していった。…
…一般的には材質はほとんどがソーダガラスであるが,カリクリスタルガラス,鉛クリスタルガラスも用いられる。後者は酸化鉛を含んだもので,含有率25%以上が上質とされ,カット加工をほどこしてカット・グラスとも呼ばれることが多い。大量生産品のグラスは機械で成型し,歪みの発生を防ぎ熱や衝撃に耐えるように,徐冷炉で時間をかけて冷ます。…
※「カットグラス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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