改訂新版 世界大百科事典 「クワゴ」の意味・わかりやすい解説
クワゴ (桑蚕)
mulberry wild silkworm
Bombyx mandarina
鱗翅(りんし)目カイコガ科の昆虫。クワコともいい,幼虫はクワの害虫である。日本全土のほか中国,朝鮮などに分布する。卵は扁平で直径1.5mmくらいの円形をしており,色は非休眠卵は黄褐色,休眠卵は灰緑色を呈する。幼虫の形はカイコに似ているが全体に小さく,頭部を引っ込めると胸部が丸く大きくなる。幼虫の体色は褐色で背正中線に黒い紋様のあるものとないものがある。紋はカイコと同様に眼状紋,半月紋,星状紋を有するが,ほかに胸背部に1対の紋を有する。幼虫期間は15~20日くらいで,3眠のものが多いが,春と秋には4眠のものが混在する。繭は小さく紡錘形で,淡黄色を呈する。糸は光沢があり,繊度が細く上質であるが,糸量は少ない。さなぎの体色は茶褐色のものと黒色のものがあり,蛹(よう)期間は12~60日で仮眠するものもいる。成虫は体長15~25mmで灰褐色。前翅の開張幅は28~46mmで,先端に黒褐色の紋があり飛翔(ひしよう)する。通常は卵で越冬し,日本では1~3化性で,中国では4化性のものもいる。クワゴをカイコの祖先と考え,同一種の野生型がクワゴで飼育改良型がカイコであるとする説や,共通の祖先をもつ別種のものであるとする説などがある。クワゴの染色体数はn=27で,カイコはn=28であるが,日本以外に分布するクワゴはいずれもn=28である。n=27のクワゴとカイコは交雑可能で,交雑種はn=27で1本の染色体が3価対合する。交雑種は生殖能力を有し,雄は飛翔することもできる。クワゴはカイコに比べ各種形質において変異に富み,とくに卵期間および蛹期間は不斉一である。幼虫体内に寄生する天敵が多く,クワゴヤドリバエ,カイコノウジバエ,キアシブトコバチなどがいる。
→カイコ
執筆者:小林 正彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報