〈ダブル・ベース〉〈弦バス〉とも呼ばれる。バロック時代には通奏低音の重要な楽器として,現在ではオーケストラの最低声部の担い手として,またジャズのコンボにも欠くことのできない低音楽器である。弦の数は,ベートーベンの頃は3本だったが,現在は主として4本で,調弦は低い方からE,A,D,Gである。チェロの音を1オクターブ下で重複する必要から,低い方にC線を加えて5弦にしたり,4弦のまま特別の装置をつけたものもある。独奏する場合には弦をすべて1音高く調弦して弦の張力を強め,音色をより輝かせるようにすることがあり,これは〈ソロ・チューニング〉といわれる。
前身はビオル属の最低音楽器ビオローネとバス・バイオリンで,現在バイオリン属になっているが,ビオローネの形が色濃く残っているため,オーケストラの中の唯一のビオル属といわれている。楽器の形はなで肩で,平らな裏板,完全4度調弦,弓の持ち方はビオル属を受け継ぎ,フレットのない指盤,渦巻,f字孔などはバイオリン属の形である。ただし比較的新しいものはバイオリン属のつくりが多くなった。弓の持ち方は,現在大別して,D.ドラゴネッティ(1763-1846)の考えたビオルのような持ち方(ドイツ式)と,G.ボッテシーニ(1821-89)の使っていたチェロのような持ち方(フランス式)の2種類があり,弓自体の形も少し異なる。奏法は立ったままか,いすに腰かけて演奏し,管弦楽などでは擦奏がおもに用いられるが,ピッチカート奏法もしばしば用いられ,ジャズではリズム楽器として基本的な位置をしめ,ピッチカート奏法で特色を発揮する。
通常古典派までは原則としてチェロと同じ音を1オクターブ重複していたが,やがて独立したパートを弾くようになった。その初めの試みはモーツァルトの《ジュピター交響曲》の終楽章である。作品としては,コントラバスの名手ドラゴネッティの協奏曲が有名で,弦長の長い弦楽器が自然ハーモニックスを出しやすいという利点を生かして華やかな効果を出している。室内楽ではシューベルトの五重奏曲《鱒》,またこの楽器のユーモラスな一面をとらえたサンサーンスの《動物の謝肉祭》の中にある〈象〉もおもしろい。指揮者のクーセビツキーはコントラバス奏者でもあり,自作にコントラバス協奏曲のほか《シャンソン・トリステ》や《小さなワルツ》などの小品もある。
執筆者:江口 朝彦
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弦楽器。バイオリン属のなかで最低音域を受け持つ。ダブルベースともよばれる。外形はバイオリン属の他の楽器とほぼ同じだが、ビオール属の名残(なごり)をややとどめ、一般に胴の肩の部分がなだらかで、胴の上部が棹(さお)に沿う形ですこし伸びている。一部には裏板の膨らみの少ないものもある。全長約2メートル。糸巻は弦の大きな張力に対応するために歯車式になっている。左手の負担を減らすために調弦は4度間隔で、4弦のコントラバスではE2-A2-D3-G3に調弦されるが、必要に応じてE線をCにまで下げられる装置がついたものや、C線を別にもつ5弦の楽器も多く用いられる。古典派時代まではチェロの8度下を重ねる使われ方が多かったが、しだいに独自の地位を獲得し、ときには独奏にも用いられる。ジャズなどに使われるときはウッド・ベースもしくはベースとよばれ、弦をはじくピッチカート奏法が中心になる。
[前川陽郁]
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…弦楽器の一種,大きなビオラの意。16世紀にはビオラ・ダ・ガンバのバスを,やがてそれより5度またはオクターブ低いコントラバス・ガンバを指すようになった。16世紀後半から顕著になった宮廷音楽における祝祭性は,より大きな合奏体を要求し,その土台を支える豊かな響きをもつ低音楽器の開発を促した。…
※「コントラバス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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