日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミシェル」の意味・わかりやすい解説
ミシェル
みしぇる
Clémence Louise Michel
(1830―1905)
フランスの女性革命家、文学者、詩人。オート・マルヌ県の貴族の私生児として生まれる。高等教育を受けたのち教師となったが、早くから社会問題に目覚め、詩作を行いながら貧しい労働者の教育に従事した。第二帝政憲法に忠誠を拒否、パリで私塾を開き、貧民教育に献身しながら革命運動に参加した。1870年のプロイセン・フランス戦争のパリ籠城(ろうじょう)戦中は、モンマルトルの監視委員会に選出され、ブランキ派の革命家フェレCharles-Théophile Ferré(1845―1871)と親交を結んだ。翌1871年3月18日のパリ・コミューンの革命に際しては、武器を手にして活躍、コミューンとベルサイユ政府との内戦が再開されると、イシー、ヌイイの戦闘に加わり、最後の「血の週間」の市街戦でも最後までバリケードで戦った。コミューン崩壊後一時死刑を宣告されたが、結局ニュー・カレドニアに流刑となり、その地で先住民カナカの民族運動を指導した。1880年大赦を得て帰国すると、無政府主義者の運動に身を投じ、三度有罪宣告を受け、1890年から1895年までイギリスのロンドンに亡命した。地方講演中急死したが、葬儀には多数の労働者、下層市民が参加した。詩などの文学作品のほかに、パリ・コミューンの回想録などの著作がある。
[桂 圭男]
『ルイーズ・ミシェル著、天羽均・西川長夫訳『パリ・コミューン』上下(1971・人文書院)』