三島事件(読み)みしまじけん

共同通信ニュース用語解説 「三島事件」の解説

三島事件

作家の三島由紀夫みしま・ゆきおと民間防衛組織「楯の会」メンバー森田必勝もりたまさかつらが陸上自衛隊市ケ谷駐屯地で、東部方面総監監禁した。三島戦後の日本を対米追従と批判し国軍創設を主張。バルコニー演説し、憲法改正や自衛隊の決起を呼び掛けた。体験入隊して自衛隊との関係を深めたが、同調者はなく、三島と森田は総監室で割腹自殺した。著名作家が選んだ衝撃的な死は、社会に大きな波紋を広げた。駐屯地に同行した他のメンバー3人は監禁致傷罪などで実刑判決を受けた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三島事件」の意味・わかりやすい解説

三島事件
みしまじけん

1970年(昭和45)11月25日、作家三島由紀夫が東京・市谷(いちがや)の陸上自衛隊東部方面総監部で割腹した事件。三島は1968年10月、「反共」「天皇制支持」「暴力是認」を三本柱とした主義の下に自らが主宰者となって学生組織「楯(たて)の会」を結成していた。同会は、左翼と対決する民間武装兵力として自衛隊に体験入隊し、軍事的知識・技術の修得を行ってきた。この日午前11時前、三島は会員4名とともに会の制服を着用して同総監部を訪れ、益田兼利総監を人質とした。バルコニー前に自衛隊員約1000人を集合させ、檄文(げきぶん)をまく一方、憲法を改正して自衛隊を国軍とするためのクーデターを呼びかけた。だが、隊員からやじが激しく飛び演説はほとんど聞こえなかったという。午後0時15分ごろ三島は会員森田必勝とともに総監室内で割腹自殺した。ノーベル文学賞候補とも目されていた三島の行動は、国の内外に衝撃を与え、民主主義を否定し軍国主義を復活させるものであるとの警戒心を呼び起こした。

[荒 敬]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三島事件」の意味・わかりやすい解説

三島事件
みしまじけん

作家三島由紀夫の割腹自殺事件。 1970年 11月 25日午前 11時 10分から同日午後0時 15分にかけて三島は「楯の会」の会員4人を伴い,東京都新宿区市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部総監室を訪問,総監の益田兼利を縛り,不法監禁するとともに総監室を占拠。これを排除しようとした自衛隊員に日本刀などで切りつけ8人に重軽傷を負わせた。三島は自衛隊員に決起を呼びかけるアジ演説を行なったのち,早稲田大学学生森田必勝とともに割腹自殺した。警視庁は小賀正義,小川正洋を暴行傷害,不法監禁,公務執行妨害の容疑で現行犯逮捕した。三島の自決は平和な戦後社会に強い衝撃を与えた。さらに右翼だけでなく極左陣営の青年にも刺激を与え,左右の青年7人があと追い自殺をはかった。この事件は,三島の動機についてさまざまな推測を生んだが,同時に彼の死によって特異な才能をもった作家が,この世界から失われたことが惜しまれている。

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