元史(読み)ゲンシ(その他表記)Yuán shǐ

デジタル大辞泉 「元史」の意味・読み・例文・類語

げんし【元史】

中国二十四史の一。歴史を記したもの。宋濂そうれんらの撰。1370年成立。本紀47巻、志58巻、表8巻、列伝97巻の全210巻。文字記述に乱れがあり、1919年に柯劭忞かしょうびんが「新元史」を撰。

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改訂新版 世界大百科事典 「元史」の意味・わかりやすい解説

元史 (げんし)
Yuán shǐ

中国元代についての官撰の紀伝体歴史書正史一つ。元史研究の基本文献。210巻。宋濂らの編。明朝成立の後ほどなく,1370年(洪武3)に完成。短期間に編纂されたので疎漏が多いと古来悪評があった。清代以後著された邵遠平《元史類編》,魏源《元史新編》,曾廉《元書》,屠寄《蒙古児史記》,柯劭忞新元史》はいずれもその補修の試みである。1775年(乾隆40)以後の殿本系統の版本は,故意固有名詞を書き改めたところがあるため,百衲本(ひやくのうぼん)などを用いるべきである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「元史」の意味・わかりやすい解説

元史
げんし

モンゴル帝国および中国の元朝を扱った紀伝体歴史書。210巻。明(みん)朝初め、1369年、70年の二度編纂(へんさん)された。歴代ハンの治世を記す「本紀」47巻は『十三朝実録』、制度の記録「志」53巻は『経世大典(けいせいたいてん)』、個人の伝記「列伝」97巻は碑文文集などによって作成された。刊本としては洪武(こうぶ)刻本を影印した百衲本(ひゃくのうぼん)がもっともよい。短時日で編纂されたためか、列伝には重複、疎漏があり、清(しん)代考証学者の悪評はあるが、原資料に忠実に作成され、史料価値は高い。ただ、たとえば、元朝を建てたフビライ政権を争った弟アリク・ブハは、帝位継承の名分があったが、反乱者として記録されるだけであるなど、原資料の偏りを反映した限界も多い。

[松田孝一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「元史」の意味・わかりやすい解説

元史
げんし
Yuan-shi; Yüan-shih

中国の元代を扱った歴史書。正史の一つ。 210巻。明初の宋濂らの編修。洪武3 (1370) 年に成る。官撰の正史としてわずか2年間で2度に分けて編纂されたため,疎漏の点を免れないが,原資料をそのまま利用したところが多く,史料的価値は大きいとされる。

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