翻訳|fixed cost
経営活動量(操業度や販売量など)の変化とは関係なく、特定の操業水準の範囲内では変化することなく発生するコストをいう。変動費に対立する概念である。この典型的な例としては、減価償却費(厳密な意味では定額法のもの)、固定資産税、家賃などの物的な設備能力の維持によって発生するものが多いが、役員の報酬や事務系職員の給与など人的な経営能力にかかわるものもある。通常は、固定費として把握されるものは、正常な活動圏内で固定的であり、操業水準がかなり変化する場合には多くのものが準固定費(段階費)となることが多い。1970年代ころからは、固定費のコントロールを重視し、その発生源泉の観点から、これをキャパシティ・コスト(経営能力費)と理解し、発生させる意思決定時点でのコントロールが効果的であると考えられている。固定費と変動費の区分は、損益分岐点分析、直接原価計算などを利用する利益計画にとって重要な意義をもつ。
[東海幹夫]
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…間接経費は,間接材料費(製造に費やされるが特定の製品との関係を明確に後づけることができない材料費),間接労務費(同様の労務費)とともに製造間接費(〈直接費・間接費〉の項参照)を構成する。また経費は,消費額や発生額を月別に把握する方法の相違により,(1)減価償却費や賃借料のように数ヵ月分を一括して計算ないし支払った額をもとにして把握する月割経費,(2)電力料や水道料のようにメーターで消費額を測定して把握する測定経費,(3)外注加工費や支払運賃のように支払伝票などの証憑(しようひよう)書類で発生額を把握する支払経費,(4)棚卸減耗損,仕損費(仕損品が発生した場合の原価)のように必ず発生するとは限らないが発生の際にその事実に基づいて把握する発生経費,に分類されたり,あるいは操業度との関連で,その変動に応じて変化する変動経費(変動費)と変化しない固定経費(固定費)に分類されたりする。 以上のように,経費は会計学上,製品の製造原価を構成する原価要素の一種を意味するのが普通であるが,時により,単に製造間接費を意味するものとして用いられたり,あるいは製造原価以外の販売費や管理費をも含めたものを意味するように用いられたりすることがある。…
…また原価の実際発生額を責任センター別に集計するだけでは不十分で,あらかじめ科学的に作業の物量標準を定め,それに基づいて原価の達成目標を標準原価として指示しておき,標準原価と実際原価とを比較して差異を計算し,差異の発生原因を管理可能差異と管理不能差異とに分析し,改善策を講ずることが効果的である。
[利益管理用の原価]
利益管理のためには,原価を営業所や事業部などの利益責任センター別に集計するとともに,原価は製品の売上量の増減に応じて変化する原価(変動費)と変化しない原価(固定費)とに分類し(〈固定費用・可変費用〉の項参照),それらを総合予算の中に組み入れて,責任者別に管理可能費と管理不能費とに区分しなければならない。利益管理のためには,伝統的な原価計算(全部原価計算)よりも直接原価計算のほうが,はるかに有効である。…
…財やサービスの生産に必要な費用の中身は,大別して固定費用と可変費用(変動費用ともいわれる)とに分けられる。固定費用とは,財・サービスの生産量にかかわりなく,つねに一定額だけは支払わねばならない費用を指す。…
…しかし伝統的な経済学の体系においては,この支出に人件費,とくに生産活動に直接組み込まれている労働者の人件費を加えたものを生産の直接費であると考え,これを主要費用prime costと呼んでいる。主要費用は,生産物の産出量と比例して変化する比例的可変費(固定費用・可変費用)である場合と,必ずしもそうではなく,産出量が大きくなるほど産出量1単位当りの主要費用が小さくなる(歩留りがよくなる)場合(不比例的可変費)とがある。後者の場合は,主要費用において規模の経済性が存在するといわれる。…
…この曲線CC′を総費用曲線という。図における水平線CDは産出量の大小に関係なく単位期間に支払われなければならない間接費(あるいは固定費)である。間接費のなかでおもなものは利子,地代,家賃,特許料,減価償却費などである。…
※「固定費」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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