肥育(読み)ヒイク(英語表記)fattening

翻訳|fattening

デジタル大辞泉 「肥育」の意味・読み・例文・類語

ひ‐いく【肥育】

[名](スル)食肉用の家畜の肉量を増やし、肉質をよくするための飼育法。畜舎を暗くし運動をさせず、良質の飼料を与える。「肉牛肥育する」

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精選版 日本国語大辞典 「肥育」の意味・読み・例文・類語

ひ‐いく【肥育】

  1. 〘 名詞 〙 家畜の肉量増加のために行なう飼育法。畜舎を暗くし、運動をさせないで、良質のえさを多量に与えるなどすること。
    1. [初出の実例]「肥育の第一番の秘訣は愛撫、愛情である」(出典:安吾新日本地理(1951)〈坂口安吾〉安吾・伊勢神宮にゆく)

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改訂新版 世界大百科事典 「肥育」の意味・わかりやすい解説

肥育 (ひいく)
fattening

食肉を生産するために,家畜や家禽かきん)を太らせること。肥育を行うことにより,体内の脂肪の蓄積増し,屠体(とたい)における可食部の割合が増加するとともに,筋肉内に脂肪が適度に分布するため,風味のよい,優れた食肉を生産することができる。肥育の対象となるのは肉牛,ブタ,肉メンヨウ,肉用家禽など肉専用種の場合が多いが,他の目的で飼われた家畜を短期間肥育して肉を利用する場合もある。ブタやブロイラー用ニワトリにおいては成長の初期から肥育が行われる。この場合は動物の発育にあわせて肉畜として仕上げていくので,飼料効率はもっともよい。肉牛や肉メンヨウの若齢肥育も同様であるが,この場合には初めから肥育に入る方法と,最初は通常の育成期として最後に仕上げ肥育を行う場合とがある。肉質は若齢であるため,柔らかく適度の脂肪も入って佳良である。これに対して壮齢肥育というのは産乳や使役などの目的でなん年か使用した後に肥育するもので,牛の場合なら100~150日間ぐらい飼い直して脂肪をつけ肉質の改善を図るものである。短期肥育であり,肉質はあまりよくない。肉専用種である和牛にはこのほかに理想肥育という方法がある。これは明け2~3歳で体重400kg前後の優れた資質をもつ雌牛を1ヵ年くらいかけて肥育して体重600~700kgに仕上げるもので,素牛(もとうし)として高価なウシを用い長期肥育を行うために,その牛肉は著しく高価なものになる。いずれの肥育の場合においても,飼料は十分に与えて子畜または成畜を太らせて最終生産物である肉畜に仕上げるわけであるが,飼料の種類や飼養管理の方法は,家畜の種類,素畜の状態,肥育法などによってさまざまである。アヒルガチョウでは強制肥育と呼ばれる特殊な肥育法をとる場合もある。これは肥育の最終段階で,運動を制限し,1日数回定時に,消化のよい高タンパクの液状の飼料を胃内に強制的に注入する方法で,栄養過多のために脂肪肝となる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「肥育」の意味・わかりやすい解説

肥育
ひいく

食肉を生産する家畜や家禽(かきん)をと畜前に肥(ふと)らせることをいう。そのためには、栄養価の高い肥育飼料を与えて激しい運動を避け、体内の脂肪蓄積と筋肉の増大を促し、筋肉組織に脂肪をほどよく分布させて、肉の品質をよくすると同時に、より多くの肉を生産するように飼育する。成長中は体内にタンパク質と脂肪の蓄積が増加するが、成熟期に近づくと脂肪の蓄積のほうが多くなるので、これを避けるため肥育後半は飼料摂取量を抑制する。肉専用種は成長の初期から肥育される場合と、初めは通常の成長に準じた育成期とし、最後に仕上げ肥育を行う場合がある。ウシでは3~4か月間で仕上げる短期肥育と、肉質をよくするため一か年かけて肥育する長期肥育があるが、ブタやブロイラーではより速く増体させるような肥育法が一般的である。兼用種やほかの用種も、雌畜の場合は産乳そのほかの生産に使われたのち肉用に短期肥育される。雄畜の多くは初めから肉用に肥育されるが、発育は速いが肉質が粗く雄臭があるので、去勢して肥育される場合が多い。

[西田恂子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「肥育」の意味・わかりやすい解説

肥育
ひいく
fattening

食用の目的で家畜,家禽を太らせること。肥育の方法は時期的には3期に分れ,初期は炭水化物と飼料固形物の給与量を増し,中期は炭水化物を少し減らし蛋白質の給与量を増す。後期は家畜を静止させ,舎内を薄暗くして,再び炭水化物を増し,蛋白質の給与を減らす。こうして前,中期には太らせて体重を増し,後期には脂肪や肉質の改良をはかるという方法が一般に行われる。

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栄養・生化学辞典 「肥育」の解説

肥育

 肉牛やブタを出荷の状態にするために肉量を増やし,脂肪をつける育成過程.

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